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従兄と推しとお揃いで

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 ルーナは目の前の生地と睨めっこしては、うーんと唸る。

 その前ではデザイナーが顔を青くしたり白くしたりしながら、オロオロとしていた。

 ちなみに壁際に並ぶ侍女も、ルーナの前で順に生地を広げる執事も、平然とした表情だ。

「あ、あの・・・何かお気に召しませんでしょうか?」

 最新気鋭のデザイナーとして、アデライン王国で名を馳せ始めた彼女だが、アデライン王国筆頭公爵家に睨まれたらこの国では仕事ができない。

 顔が、青くも白くもなるというものである。

 当然のことながら、ルーナは相手がたとえ気に入らなくても仕事の妨害をしたりしない。

 ただし、ルーナの大切な者たちに悪意を向けない限りは、という限定付きだが。

「え?いいえ。そうではないの。そうではないのだけど、生地ってこれだけ?」

「はっ、はいっ。な、何かお探しの生地がありますのでしょうか?」

 デザイナー、お名前をマチルダさんという、は生地見本の台帳を取り出した。

 公爵家のご令嬢とその身内の方が学園に通うので、その衣装用にと特別に良い生地ばかりを選んで来たのだが、ご令嬢は他の生地をご所望なのかもしれない。

「学園に通うのだから、あまり華美でなくて、汚れが目立たない生地がいいの。その上で、しわになりにくいともっといい」

「しわになりにくいとなりますと、やはりシルクになりますが、シルクは光沢がありますから華美に見えやすいかもしれません。それに摩擦に弱いですから」

「そうなのよね。放湿性や吸湿性、保温性にも優れてるし良いんだけど、デリケートなのよね」

 ルーナは、シルクの見本生地を手に唸っている。

 パーティーに参加するドレスなら、シルク一択なのだが、学園に通うための、いわゆる制服である。

 高位貴族の令嬢として、毎日同じというわけにもいかないし、安価なものばかりというわけにもいかない。

 前世の制服のように、ナイロンやポリエステルとの混合繊維があればいいのだろうが、この世界には化学繊維はない。

 化学繊維を作ろうにも、どうやって作るのか知識がない。

 ここにスマホがあればググるのに!
唸るルーナであった。

「全てシルクで作るわ。ランス兄様のはロイヤルブルーやラピスラズリ、サファイアなど濃いめの青をベースに、それぞれ金糸の刺繍を。カイルは黒の執事服に青と銀の刺繍を入れて数着お願い」

「お嬢様のドレスはいかがされますか?」

「そうね、私はアメジストやウィスタリア、ラベンダーなど紫をベースに黒のレースや青の刺繍を」

 どうやらルーナは、ランスロットやカイルと『お揃い』の制服にするようである。
 

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