悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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入学準備とその他諸々

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 半年後の学園入学に向けて、ルーナはもちろんのこと、ランスロットとカイルの学園入学の準備にかかる。

 アデライン王国王立学園は、貴族が通う学園である。

 だが貴族が通うゆえに、一人だけ侍従侍女の同伴が認められていた。

 ただし、授業を共に受けることは出来ない。
 授業中は待機室で待つことになる。

 カイルが伯爵家の嫡男であったことを知る貴族は多い。

 侍従としてランスロットと学園に通うことは、カイル自身が辛い思いをするのではないか。

 筆頭公爵家で擁護しているランスロットの侍従に、直接何かを言う馬鹿はいないだろうが、陰で嫌がらせを受けるかもしれない。

 だが、そんな心配をするフィオレンサ公爵夫妻に、ルーナはあっさりと言い切った。

「大丈夫。カイルはそんな弱い人間じゃないし、陰口なんかに負けない。それに私の大事な推しに陰口を叩くような相手は、私が潰すもの」

 綺麗な、誰もがうっとり見惚れる笑みを浮かべたルーナの口から出た言葉は、聞き間違えかと思うほど物騒で、夫妻は顔を引き攣らせた。

 自分たちも若い頃はやんちゃをしたし、今でも奔放に生きていることは否定できない。

 だが目の前の娘は、それを軽く凌駕していた。

 ルーナが滅ぼすと言えば、このアデライン王国も実質的に滅ぶだろう。

 ランスロットは兄の忘れ形見で、大切な甥っ子だ。

 両親の死のきっかけとなった事故で、自身も重傷を負い、精神的にも弱ってしまった。

 そのランスロットを支えてくれたのが、カイルである。

 夫妻としては、カイルの境遇は不憫だがランスロットのことを考えると、無理をおしてでもカイルに侍従として学園に通って欲しい。

 だがその願いが、ひどく醜いものだということも理解していた。

 可愛い甥のために、救ったように思わせておいて、逆に傷つける行為をする。

 ランスロットやルーナに、軽蔑されるかもしれない。

 躊躇う夫妻に、ルーナはあっさりと言い切ったのだ。

 カイルを傷つけさせない、と。

 ルーナは自分の大切な者を傷つけるなら、相手が誰であろうと叩きつぶす。

 そうはっきりと言い切ったのだ。

 この時点で、フィオレンサ公爵夫妻は覚悟を決めた。

 今まで、ルーナが望まない道を選択しないようにと、上手く王家と渡り合って来たが、このアデライン王国を出なければならないことを視野に入れて準備しておくべきかもしれない。

 ルーナは決して、正義の味方なわけではない。
 ただ、自分の大切なものは絶対に守ろうとする。

 そして守り切る力がルーナにはあるのだ。

 学園入学の準備の陰で、フィオレンサ公爵夫妻は国外に逃げるための準備を始めるのだった。



 

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