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愚か者の行き着く先

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 チェリーさんの拒絶。

 お父様やクリス様、ダイジェスト伯爵の冷たい視線。

 ラクトウェル殿下とチェリーさんの心配そうな顔。

 そのどれもがカクラムには届かなかった。

「お前・・・お前のせいでッ!チェリーがこんなことを言うなんて!」

 父親であるダイジェスト伯爵に押さえつけられていたカクラムは、父親を跳ね飛ばす勢いで立ち上がり、その勢いのまま私につかみかかろうとした。

 王宮の中は、王宮騎士以外の帯剣は認められていない。

 魔法も使える者がいるが、王宮内は魔法障壁が張られていて、使うことは出来ない。

 つまりは、体術のみでしか攻撃は出来ず、本来なら私はカクラムに敵うわけがない。
 しかも、私は前世で運動が苦手だった。
公爵令嬢のルミナスとしても即座に動けるわけがない。

 そう。本来なら。

 クリス様が私を抱き寄せ、即座に反応したレイラが私の前に立ち塞がり、エレンがカクラムを足払いした。

 あ。ちなみに、エレンは騎士服を着ている。
 普通、ご令嬢は王宮に来る時はドレス姿なんだけど、エレンはクリス様付きの騎士もしていたから、普段から騎士服だ。

 女性とはいえしばらくクリス様に付いていたからだろう。

 エレンの攻撃は的確だった。

 カクラムが、エレンやレイラを女だからと軽くみていたということもある。

 エレンは、カクラムの駆け寄ろうとした勢いをうまく利用して足払いで倒し、膝で体を押さえつけていた。

 うん。的確。
私は、クリス様、そしてエレンやレイラのことを信用している。

 それこそ身を挺してでも、私を守ってくれるだろう。

 ここが王宮でなければ魔法で自分の身を守ることもできたかもだけど、魔法が使えないと私はとことん無力だ。

 他国の王太子妃教育には、護身術を学ぶところもあるらしい。

 前にそれを聞いて、習おうかとポツリと言ったら、エレンが「私では信用なりませんか?」と言うし、レイラも何故か暗器を手に入れようとするし。

 で、断念した。
守ってくれるのだから、大人しく守られておこう。

 魔法障壁がなければ、別に私も魔法使えるし。

 大体、クリス様と一緒にいて、私が危険な目にあうことなんてほぼほぼない。

 ちなみに、チェリさんまで私を守ろうと前に出ようとしたものだから、ラクトウェル殿下が慌ててチェリーさんの前で立ち塞がった。

 エレンに全体重で押さえられているカクラムは、すぐに王宮騎士たちに拘束された。

 ダイジェスト伯爵が、絞め殺しそうな顔をしてるわ。
 よ、よかった。武器の持ち込み禁止で。

 カクラムは確かに馬鹿、いや未だに自分の間違いに気づかない、大馬鹿だけど。

 エレーヌと違って、まだ未成年のカクラムにはやり直す機会を与えたい。

 何より、チェリーさんに憂いを残したくなかった。






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