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護衛騎士の憂鬱2《エレン視点》

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 ライトに照らされた庭園に出た私は、近くにあった椅子に腰を落ち着けることにしました。

 父たちと一緒にいると息が詰まります。
ホッと息を吐いた私に、後ろから声がかけられました。

「こんなところで何をしているの?」

 かけられた声に振り返ると、そこには青色の髪に紫色の瞳をした美丈夫が立っていました。

 いくら年齢が離れているとはいえ、この国の王太子殿下の顔くらい知っています。

「も、申し訳ございません」

「どうして謝るの?君、何も悪いことしてないでしょ?」

 私には、すぐに謝るクセが付いています。
 そうでないと、父や母と姉に、すぐ手をあげられてしまうからです。

「申し訳・・・」

「で、何してたの?確か、セレズノア侯爵家の次女、エレン嬢だっけ」

 国王陛下へのご挨拶で名乗りはしたけれど、まさか王太子殿下が、侯爵家の次女に過ぎない自分の名前と顔を覚えて下さっていることに驚きました。

「別に何も・・・」

「君は姉のように僕に婚約者に相応しいのは自分だと言わないの?」

「・・・ッ!申し訳ございません。姉が失礼なことを申しました」

 あの姉エレーヌならやりかねません。
そして、父も母も、それに同意したのだと思います。

 確かに、身分としては問題ありません。
でも、ろくに淑女教育もできていないのに、どこからあの自信がくるのでしょう。

 ああ。父と母が肯定するからでしょうか?

「まぁ、あの程度の見た目で、あの自信はある意味すごいけどね。そして君が謝る必要はないよ。本人や親の不始末は、本人たちが支払うべきだからね」

「不始末・・・」

「ああ、でもあの家族なら、君に責を負わせそうだね。ねえ、何か目指してること、やりたいことはないの?あの家から出る手助けをしてあげるよ」

 王太子殿下の言葉に、私はマジマジと殿下の顔を見つめてしまいました。

「ちょっと!!何しているのよッ!」

 背後から金切り声が聞こえ、それが姉の声だと分かった時点で、私の顔からは血の気が引きました。

 これでまた、父や母、姉に打たれてしまいます。

 姉の金切り声と共に、父の「どうした?エレーヌ」という声や足音が聞こえ、私は振り返ることすらできません。

「お父様、ひどいのよ。あの子ったら、クリストフ様に色目を使って」

「なんだと?おいっ!どういうつもりなんだ!?」

 婚約者でない王太子殿下をお名前で呼ぶ姉にも、それを聞いて注意するでもなく私を罵倒しようとする父にも、もうウンザリです。

 私の肩に父の手がかかりそうな気配がして、私はキツく目を瞑りました。

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