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たとえ何があっても《クリストフ視点》

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 水晶の中でゆらめく虹色の光、そして黒炎にぐらりとめまいがした。

 虹色の炎は、聖女の力を示している。
聖女とは、癒しの力を持つ者である。ただ、聖女なら、金色の炎が現れるのだ。

 300年ほど前に、虹色の炎を持つ聖女が現れたそうだ。

 癒しの力を持ち、そして強い結界を張ることもできたそうだ。
 そのおかげで、その聖女が存命の間は国は他国や魔物からの襲撃から守られ、繁栄したとあった。

 それだけでも、ルミィの存在は稀有だ。
この事実を知れば、他国もルミィを欲しがるだろう。

 存在するだけで、気候は安定し、作物は普段以上に実る。天変地異もなく、他国や魔物の襲撃も防げるのだから。

 だけど、問題はそこじゃない。

 黒炎の魔女。
伝承にしか残っていない、伝説の存在。
 伝承には、禁忌魔法である空間転移魔法や、召喚魔法まで使えるとあった。

 一瞬で転移して王の首をはねることも、敵国に魔物を召喚することもできる魔法使い。
 そんな存在、危険視されるし、拘束監禁されるだろう。

 だが、父上たちに報告しないわけにはいかない。

 しかし、良かった。婚約しておいて。
仮にも王太子の婚約者だ。
 父上たちも、すぐに強行手段に出ることはないだろう。

 もしも、ルミィに何かするのならば、たとえ父上や母上でも許さない。

 その覚悟を決めて、父上たちのいる執務室を訪れた。

「どうした?クリストフ」

「父上、母上、大切な話があります」

 お茶の支度の後、侍女を下がらせる。
扉の外にいる護衛を警戒して、僕はテーブルに遮音の魔道具を置いた。
 これは、魔力を流すことで狭い空間だが音を遮音することが出来るものだ。

「クリストフ?」

 遮音具を出したからだろう。父上と母上の顔が警戒したものになる。

 魔力を流して、完全に遮音されたことを確認する。
 簡単だ。声を上げて護衛を呼んでみればいい。誰も入室してこなければ遮音出来ている証拠だ。

「何があった?」

「ルミナスの魔力属性を調べました。水晶内に、虹色の炎が揺らめき・・・」

「虹色っ?」

「その中央に、黒炎が存在しました」

「!!!」

 僕が続けた言葉に、父上も母上も驚愕に目を見開く。

 それはそうだろう。
虹色だけでも、稀有な存在なのだ。それなのに、伝承の中の存在が現れたのだ。

「それは・・・確かなのか?」

「水晶が壊れていないのなら、確かです」

 あのあと測った魔力量も、7歳年上の僕をはるかに上回っていた。

 魔力量は、年齢と訓練により向上する。
王太子である僕は、同年代の子息よりもはるかに多い魔力量を持っている。

 ルミィの魔力量は、その僕を遥かに上回っていた。









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