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お土産と優しいお隣さん

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 そのケーキ屋は、本当に人気らしくて、店内に入るのに30分ほど並んだ。

 クリス様は、私を抱き上げようとしたけど、もちろん断固拒否させてもらった。

 確かにルミナスとしては、こんなに長く立ったままなことはなかったけど、前世では行列に1時間並ぶとか普通にあったし、スーパーで混んでて、レジで30分待ちとかも普通だった。

 こういう時、クリス様の王族の権威を使わないところ、すごく好き。

 若くて健康なんだし、店に入りたいのは、貴族も王族も平民も関係なくて、みんな同じようにお金払うんだから、並ぶべきよね。

 並んでいる間、綺麗なお姉さんたちが、チラチラとクリス様を見ているのは、ちょっとだけムッとした。

 年齢的に、多分兄妹とかに見られているんだろうなって思う。

 クリス様は超絶美形だから、みんなに見られるのは仕方ないんだろうけど、私が同じくらいの年齢だったら、ちゃんと恋人に見られたのかな、と思う。

「お待たせしました。どうぞ~」

 案内された席は、ちょうど店の角席で、隣の席は、お父様年代のご夫婦だった。
 良かった。綺麗なお姉さんたちじゃなくて。隣だったら、声かけて来たかもしれないし。

「ルミィ。どれ食べたい?」

「ん、と、このフルーツタルトかチョコケーキか迷ってます」

「じゃあ、僕がチョコにしよう。半分こしようか」

 貴族が食べ物を分け合うなんて普通はしないけど、今の私たちは商家の子供の格好をしているし(絶対、貴族だとバレてると思うけど)私は、クリス様に餌付けされることにすでに抵抗を感じなくなってるので、素直に頷いた。

「お土産、買えるでしょうか。皆さん並ばれてるので、たくさん買うとご迷惑になりますよね」

「そうだね。足りない分は焼き菓子とかを買おうか。また買いに来ればいいよ」

「優しいお嬢さん、大丈夫よ。店員さんに伝えておけば、ショーケースのでなく、裏で作っている物を包んでくれるわよ。あまりたくさんは無理でしょうけどね」

 クリス様と話していると、隣のご夫婦の、奥さんがそう教えてくれた。

「ありがとうございます。そうしてみます」

「可愛らしいお嬢さんね。彼氏さんもお嬢さんも素敵だから、他のお客さんの視線が痛いわ。きっと、この席に座りたいんでしょうね」

「僕は優しいご夫婦がお隣で有難いです」

 あ。クリス様がご機嫌だわ。
きっと、奥さんが彼氏って言ったからね。
 普通、この年齢差だと、みんな必ず兄妹って言うもの。

 でも私も、このご夫婦が隣で良かったわ。イライラしないで、美味しいケーキを食べれるもの。

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