123 / 128
番外編
攻略対象たちのバレンタイン事情
しおりを挟む
この世界には、バレンタインというものはない。
そもそも、バレンタインとはキリスト教司教の名で、ローマ皇帝に処刑された日が2月14日だというもの、らしい。
だから、別にチョコレートをあげるという必要性はないし、そういう習慣はないわけだが、前世の記憶のある私としては、ちゃんと恋人となったマリウスに贈りたいという気持ちが芽生えていた。
「チョコレートですか?」
マリア、それからレイノルドの婚約者であるイザベラとお茶をしながら、好きな人にチョコレートを贈らないかという話を切り出した。
あ。この世界にもチョコレートはある。高級菓子とされてるけど。
前世でいうところの、ゴディ○とかって感じ。綺麗な宝石みたいにショーケースに並んでいる。
マリアは平民だから、食べる機会はなかったみたいだけど、イザベラは伯爵家のご令嬢だから一応知ってるみたいだった。
ちなみに、公爵家令嬢の私も自分用に買いはしないけど、お茶会の時とかに用いたりはする。
今回、2人に持ちかけているのは、そのチョコレートの手作りである。
いや。手作りと言っても、溶かして型にはめるだけだけど。
トリュフもいいけど、チョコスプレーがないのよね。
「好きな人にね、チョコレートをあげるの。女性から告白してもいい日って言われてるわ」
「そうなのですね。相変わらず、アニエス様は物知りですわね。我が国でも流行るかしら?」
本来、ヨーロッパでは、花束やカードを贈り合う日らしいし。
日本のバレンタインって、お菓子メーカーに踊らされてるのよね。
だから贈り物をする日って思えば良いんだろうけど、その場合クリスマスと区別がつかないわ。
やっぱり、好意を伝える日ってことにした方がいいのかも。
「女性から告白しても良い日だなんて、素敵ですわ」
「貴族の方々は、婚約者がいらっしゃる方が多いですから、恋愛という感覚は少ないのですか?」
マリアの疑問に、イザベラがそうですわねぇ、と頷いている。
「私たちの婚約は、家と家の契約で結ばれることが多いですから。もちろん、殿下とアニエス様のように相思相愛になれる場合もありますけど、基本は恋愛感情から入りはしませんわね」
「そう言うイザベラ様もノックス様と相思相愛でしょう?」
「でも、もし恋愛としての好きにならなかったとしても、結婚したと思いますわ。それが、私たちの役目ですものね」
まぁ確かに、よっぽどのことがない限り、婚約を解消することなどあり得ない。
「なら、チョコレートを贈られたら、想われてるって男性の方も気付けて、喜ばれるかもしれませんね」
確かに。
お慕いしていますと言っても、社交辞令としか思わなくても、もしバレンタインが定着して、婚約者からチョコレート、しかも手作りとか贈られたら、嬉しいかもしれない。
「レイノルド様、喜んでくれるかしら?」
「ノックス様が、イザベラ様からの品に喜ばないってあり得ないと思いますわ」
イザベラの言葉に、思わずそう言ってしまう。
こうして、私たちのバレンタインへの挑戦は始まった。
そもそも、バレンタインとはキリスト教司教の名で、ローマ皇帝に処刑された日が2月14日だというもの、らしい。
だから、別にチョコレートをあげるという必要性はないし、そういう習慣はないわけだが、前世の記憶のある私としては、ちゃんと恋人となったマリウスに贈りたいという気持ちが芽生えていた。
「チョコレートですか?」
マリア、それからレイノルドの婚約者であるイザベラとお茶をしながら、好きな人にチョコレートを贈らないかという話を切り出した。
あ。この世界にもチョコレートはある。高級菓子とされてるけど。
前世でいうところの、ゴディ○とかって感じ。綺麗な宝石みたいにショーケースに並んでいる。
マリアは平民だから、食べる機会はなかったみたいだけど、イザベラは伯爵家のご令嬢だから一応知ってるみたいだった。
ちなみに、公爵家令嬢の私も自分用に買いはしないけど、お茶会の時とかに用いたりはする。
今回、2人に持ちかけているのは、そのチョコレートの手作りである。
いや。手作りと言っても、溶かして型にはめるだけだけど。
トリュフもいいけど、チョコスプレーがないのよね。
「好きな人にね、チョコレートをあげるの。女性から告白してもいい日って言われてるわ」
「そうなのですね。相変わらず、アニエス様は物知りですわね。我が国でも流行るかしら?」
本来、ヨーロッパでは、花束やカードを贈り合う日らしいし。
日本のバレンタインって、お菓子メーカーに踊らされてるのよね。
だから贈り物をする日って思えば良いんだろうけど、その場合クリスマスと区別がつかないわ。
やっぱり、好意を伝える日ってことにした方がいいのかも。
「女性から告白しても良い日だなんて、素敵ですわ」
「貴族の方々は、婚約者がいらっしゃる方が多いですから、恋愛という感覚は少ないのですか?」
マリアの疑問に、イザベラがそうですわねぇ、と頷いている。
「私たちの婚約は、家と家の契約で結ばれることが多いですから。もちろん、殿下とアニエス様のように相思相愛になれる場合もありますけど、基本は恋愛感情から入りはしませんわね」
「そう言うイザベラ様もノックス様と相思相愛でしょう?」
「でも、もし恋愛としての好きにならなかったとしても、結婚したと思いますわ。それが、私たちの役目ですものね」
まぁ確かに、よっぽどのことがない限り、婚約を解消することなどあり得ない。
「なら、チョコレートを贈られたら、想われてるって男性の方も気付けて、喜ばれるかもしれませんね」
確かに。
お慕いしていますと言っても、社交辞令としか思わなくても、もしバレンタインが定着して、婚約者からチョコレート、しかも手作りとか贈られたら、嬉しいかもしれない。
「レイノルド様、喜んでくれるかしら?」
「ノックス様が、イザベラ様からの品に喜ばないってあり得ないと思いますわ」
イザベラの言葉に、思わずそう言ってしまう。
こうして、私たちのバレンタインへの挑戦は始まった。
21
お気に入りに追加
8,220
あなたにおすすめの小説
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。

悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた
咲桜りおな
恋愛
サズレア王国第二王子のクリス殿下から婚約解消をされたアリエッタ・ネリネは、前世の記憶持ちの侯爵令嬢。王子の婚約者で侯爵令嬢……という自身の状況からここが乙女ゲームか小説の中で、悪役令嬢に転生したのかと思ったけど、どうやらヒロインも見当たらないし違ったみたい。
好きでも嫌いでも無かった第二王子との婚約も破棄されて、面倒な王子妃にならなくて済んだと喜ぶアリエッタ。我が侯爵家もお姉様が婿養子を貰って継ぐ事は決まっている。本来なら新たに婚約者を用意されてしまうところだが、傷心の振り(?)をしたら暫くは自由にして良いと許可を貰っちゃった。
それならと侯爵家の事業の手伝いと称して前世で好きだった料理をしたくて、王都で小さな定食屋をオープンしてみたら何故か初日から第一王子が来客? お店も大繁盛で、いつの間にか元婚約者だった第二王子まで来る様になっちゃった。まさかの王家御用達のお店になりそうで、ちょっと困ってます。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
※料理に関しては家庭料理を作るのが好きな素人ですので、厳しい突っ込みはご遠慮いただけると助かります。
そしてイチャラブが甘いです。砂糖吐くというより、砂糖垂れ流しです(笑)
本編は完結しています。時々、番外編を追加更新あり。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる