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番外編

私を甘く溶かす熱

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 目が覚めたら、マリウスが私を抱きしめたまま眠っていた。

 珍しい。
いつ目覚めても、マリウスは私のことを甘く見つめているから、こんな風に寝顔を見ることなんてなかった。

 疲れてるのかな。
マリウスは王太子だ。しかも、優秀で父王である陛下の信頼も厚い。
 それに頑張り屋で、執務も大変だと思うのに、魔法や剣の鍛錬も欠かさない。

 その上、アークやマーガレット、マルクの面倒もよく見てくれる、良き父親でもある。

 私は、天に2物も3物も与えられた旦那様の、普段は見られない寝顔を堪能することにした。

 少し伸びた金の髪は、柔らかくて、サラサラしている。
 がっしりしているわけじゃないのに、鍛えられていて、そう、現世でいうところの細マッチョな体。

 結婚して7年たつ。
結婚当時に残っていた少年の面影はいつのまにか消えて、すっかり大人の男の人になった。

 スッと通った鼻筋。少し薄めの唇。今は閉じられているが、澄み渡った青い瞳。骨張った大きな手。低めの、だけど優しい声。

 いつのまにか大好きになっていた人。
その少し高めの体温が心地良い。

「そんなに熱く見つめられたら、我慢できないよ」

 私を抱きしめていた腕が、腰を引き寄せ、その胸にキツく抱き込められる。

「ま、マリウス様?起きてらしたの?」

「さっき、目が覚めたんだけどね。アニエスがあまりに熱く見つめてくれるものだから、もしかして襲ってくれるのかと期待して寝たふりをしてたんだけどね」

「お、襲っ・・・?」

「ああ。可愛い。アニエスは出会った時からずっとずっと、可愛いね。我慢出来なくて、目を開けてしまったよ」

 どうしよう。
マリウスの変なスイッチを押してしまったみたい。

「マリ・・・ぅんっ!」

 腕の中から逃れようと身じろぐと、マリウスに唇を塞がれる。

 そのままベッドに両手を押さえつけられて、マリウスが覆いかぶさってきた。

「可愛い。アニエス、愛してる」

「んっ!あ・・・んっ」

 夜着の隙間から、マリウスの手が直接肌に触れ、私の体がピクリと跳ねる。

 熱のこもった青い瞳が、私をとらえて離さない。

 夜じゃないのに。
もう、起きなきゃいけないのに。

 熱い手のひらが、私の頬を、肩を、腰を、ゆっくりと撫でていくのを拒めない。

「ああ、アニエス。僕の女神。どうか僕に慈悲を与えてくれないか」

 私は、もうマリウスの熱から逃げることができない。

 私を溶かす熱く優しい熱。
私はいつのまにか、マリウスに囚われてしまったのだと思う。

「マリウス様、愛しています」

 だからどうか、ずっと私を離さないで。





 

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