「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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番外編

ウェディングドレス《マリア視点》

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「そろそろ、俺と結婚してくれませんか?」

 アニエス様と王太子殿下に双子のお子様が産まれて、数ヶ月たった頃、公園で私の作ったお弁当を食べ終わったカイさんが、世間話の続きのようにそう言った。

 平民は、貴族の方々のように早くから婚約者を作ることもなく、結婚適齢期も比較的遅めだ。
 だけど、私とお付き合いしてくれているカイさんは私より5歳年上で、そろそろ結婚したいのかもしれない。

「別に俺は女性のように、適齢期など気にはしませんけど、日々、綺麗になっていく貴女を誰かに奪われるのではないかと、心配なのですよ」

「!!」

 カイさんは私のことを綺麗になったとか、可愛いとかいつも言ってくれるけど、私こそカッコ良いカイさんが、他の人のことを好きになってしまうんじゃないかって、いつも不安なのに。

「それで、答えを聞いても?」

「私、まだ全然お料理とかも上手に出来なくて・・・」

「今日のお弁当、美味しかったですよ?それに、料理なら俺も多少はできますし」

「カイさん、何でも出来るんですね」

 思わず、本音が出た。
カイさんにできないことってあるのかな。

「アニエスお嬢・・・王太子妃殿下が、お菓子作りをしたり、色々される方でしたのでね。どうしても覚えるようになったのですよ。それに、何でも出来るわけではありませんよ」

「そうなんですか?なんだか出来ない事がない気がして・・・」

「現に今、最愛の人にプロポーズしても、頷いてもらえていません。何が足りないんでしょうかね?」

 ズルい。
そんな風に言われたら、頷かずにいられない。

「カイさん・・・ズルいです」

「大人の男はズルいものなんですよ。それに、王太子妃殿下からマリアのウェディングドレスは、是非自分に準備させて欲しいと言われていましてね」

「アニエス様が?でも、そんなご迷惑をかけるわけには・・・」

「どうやら、ご自分の時に迷ったデザインがあるらしくて、マリアに着て欲しいそうです。あの方はマリアのことをとても大切な友人だと思っていらっしゃいますからね。ありがたくお受けすると良いと思いますよ」

 きっと、私が気にしないようにそう言ってくれてるんだと思う。
 アニエス様はいつもいつも、そうやって私のことを大切に扱ってくれる。

「近々、王太子妃殿下をお訪ねしましょうか。アーク様とマーガレット様のお顔も見たいですし」

「あ、はいっ!赤ん坊が大きくなるのは早いですし、楽しみですね」

 あれ?
私、いつのまにか、結婚をお受けしたことになってない?

 後日、アニエス様にお会いした時、何故か王妃様まで私のウェディングドレスについて色々と案を出してくださったのは、また別の話。




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