「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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学園卒業編

結婚式《前半俯瞰視点》

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 王立学園の卒業パーティーから、10日後、ハイドランジア王国の王都に、鐘の音が鳴り響いた。

 空が澄み渡ったこの日ー
ハイドランジア王国の王太子殿下マリウス・ハイドランジアと、その婚約者であるアニエス・リリウム公爵家令嬢の結婚式が執り行われた。

 金の髪にサファイアの瞳の、麗しき王太子殿下は、輝く銀の髪に空色の瞳をした美しい花嫁を、愛おしげに抱き寄せ、王宮のバルコニーから国民に手を振る。

 次期国王陛下になる王太子殿下の有能ぶりは平民の間にも知れ渡っている。
 また、王太子妃殿下の聡明さと平民にも分け隔てない優しさも同様だ。

 そんな王太子夫妻の仲睦まじい様子に、ハイドランジア王国国民は、この国の安泰を確信して、この日、王都は祝福ムード一色に染まったのであったー


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「アニエス、おいで」

 湯浴みを終えて、夫妻の寝室へ入ると、すでに部屋に戻っていたマリウスがベッドに腰掛けていた。

 ど、ど、どうしよう。
湯浴みの間中、心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてたけど、お、治らない。

 さすがに、ウェディングドレス姿のまま、寝室に直行はされなかった。

 バルコニーからお祝いしてくれる国民たちに手を振っている間中、マリウスが「早く2人きりになりたい」とか「1週間はアニエスを充電する」とか、なんか怖いことをブツブツ言ってたから、笑顔がひきつりそうだったけど。

 王太子殿下の結婚なので、お祝いの挨拶に来る人が後を絶たなかった。

 それに、王妃様・・・お母様とローラ様が「女には身支度というものがあるんです!大切な思い出をアニエスが思い出したくないようなものにするつもり?」って言って、マリウスを引っぺがしてくれたので、無事湯浴みをすることができた。

 やっぱり、その・・・マリウスに綺麗だと思われたい。

 朝からドレスを着て、式やら挨拶やらで、汗だってかいてる。
 好きな人に汗臭いとか思われたら、羞恥で死ねる。

 マリウスの前に立つと、彼の手がそっと私の絹のガウンの紐を解いた。

 顔に熱がたまるのが分かる。
湯浴みの後に用意されていた夜着は、ローラ様からのプレゼントで、いわゆるベビードールランジェリーというやつである。

 レースやリボンが付いてて可愛いけど、丈も太ももが全然隠れてないし、何より微妙に透けてる!

 まさか、こんなのを私が着る日が来るとは、夢にも思わなかった。
 そして、その姿を、結婚したとはいえマリウスに見られる日が来るなんて。

「アニエス。君は本当に可愛いね」

 マリウスは、肩からガウンを落とすと、私をぎゅっと抱きしめたー
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