「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

文字の大きさ
上 下
102 / 128
学園卒業編

新たなる日に向けて

しおりを挟む
 学園最終学年である15歳になった。
学園生活も、あと数ヶ月で終わる。

 1年前に、カイと交際を始めたマリアは、無事に学園に復活した。

 マリウスが、教師や生徒たちに「マリア嬢の婚約者は、とても嫉妬深いのでマリア嬢には近づかないように」なんて言ったから、何とかマリアも過ごせている。

 それでも、不意に教師に近づかれたりして怯えることもあるようだが、それも初めの頃に比べれば、随分と落ち着いてきた。

 マリアに聞いてみると、カイやセリオたちと一緒にいることで、男の人は怖い存在ではないと少しずつ思えるようになったのだとか。

 元々、カイには怯えなかったけど、最近はマリウスたちにも怯えなくなった。

 愛情ってすごいなぁって思った。
きっといつか、カイの愛情で元のマリアに戻れる日が来るだろう。

 それからー
マリアは聖女として、ちゃんと力を発揮できるようになった。
 マリウスのいうところの、真の覚醒である。

 国や教会から認められたために、マリアにいじめをするような人間はいなくなった。

 それはそうである。
マリアの地位は現在、公爵令嬢である私と同じ扱いなのだから。

 そういう私は、現在忙しい日々を送っている。

 マリウスが、学園を卒業すると同時に、私と結婚すると宣言したからだ。

 おかしい。
確かに卒業したら結婚することにはなっていたが、1年後とかのはずだったような。

 卒業して、それからゆっくりと婚姻の準備をするはずだったのに、何故に私は在学中にこんなに慌ただしく準備に追われているのだろう。

「アニエスは僕と結婚したくないのかな?」

 忙しさに文句のひとつでも言ってやろうと思っていた私は、マリウスの、ものすっごい黒い笑みで言われた言葉に、ブンブンと首を振るしか出来なかった。

 ヤバい。
あの笑みは、文句のひとつでも言ったら、監禁とかされるやつだ。

 あの、指輪を渡した日。
マリウスは私にサファイアのついた華奢な指輪を贈ってくれた。

「アニエスが、平民で流行ってることを知ってるとは思わなかった」

 それは私の台詞である。
王太子であるマリウスが、まさか平民で流行ってる指輪の交換を知ってるとは思わなかった。

 あの日から私の薬指にはサファイアが、マリウスの薬指にはアクアマリンが輝いている。

 婚約者ではあるけど恋人となったマリウスは、あの日から少々・・・いやだいぶ?嫉妬深くなった。執着も強くなった。

 あれは、ヤンデレというやつではないのだろうか。
 ヤンデレ枠は、レイノルドだけでお腹いっぱいである。

 まぁ、そんなマリウスだけど、私は彼のことが大好きなのだから、仕方ない。
 あの、攻略対象だからとか子供だからとか言っていた日々が嘘のようだ。

 というわけで、今日も私は、婚姻準備に忙しく過ごしているのである。

しおりを挟む
感想 324

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

闇黒の悪役令嬢は溺愛される

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。 今は二度目の人生だ。 十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。 記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。 前世の仲間と、冒険の日々を送ろう! 婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。 だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!? 悪役令嬢、溺愛物語。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。 ☆2025年3月4日、書籍発売予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

処理中です...