「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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学園卒業編

新たなる日に向けて

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 学園最終学年である15歳になった。
学園生活も、あと数ヶ月で終わる。

 1年前に、カイと交際を始めたマリアは、無事に学園に復活した。

 マリウスが、教師や生徒たちに「マリア嬢の婚約者は、とても嫉妬深いのでマリア嬢には近づかないように」なんて言ったから、何とかマリアも過ごせている。

 それでも、不意に教師に近づかれたりして怯えることもあるようだが、それも初めの頃に比べれば、随分と落ち着いてきた。

 マリアに聞いてみると、カイやセリオたちと一緒にいることで、男の人は怖い存在ではないと少しずつ思えるようになったのだとか。

 元々、カイには怯えなかったけど、最近はマリウスたちにも怯えなくなった。

 愛情ってすごいなぁって思った。
きっといつか、カイの愛情で元のマリアに戻れる日が来るだろう。

 それからー
マリアは聖女として、ちゃんと力を発揮できるようになった。
 マリウスのいうところの、真の覚醒である。

 国や教会から認められたために、マリアにいじめをするような人間はいなくなった。

 それはそうである。
マリアの地位は現在、公爵令嬢である私と同じ扱いなのだから。

 そういう私は、現在忙しい日々を送っている。

 マリウスが、学園を卒業すると同時に、私と結婚すると宣言したからだ。

 おかしい。
確かに卒業したら結婚することにはなっていたが、1年後とかのはずだったような。

 卒業して、それからゆっくりと婚姻の準備をするはずだったのに、何故に私は在学中にこんなに慌ただしく準備に追われているのだろう。

「アニエスは僕と結婚したくないのかな?」

 忙しさに文句のひとつでも言ってやろうと思っていた私は、マリウスの、ものすっごい黒い笑みで言われた言葉に、ブンブンと首を振るしか出来なかった。

 ヤバい。
あの笑みは、文句のひとつでも言ったら、監禁とかされるやつだ。

 あの、指輪を渡した日。
マリウスは私にサファイアのついた華奢な指輪を贈ってくれた。

「アニエスが、平民で流行ってることを知ってるとは思わなかった」

 それは私の台詞である。
王太子であるマリウスが、まさか平民で流行ってる指輪の交換を知ってるとは思わなかった。

 あの日から私の薬指にはサファイアが、マリウスの薬指にはアクアマリンが輝いている。

 婚約者ではあるけど恋人となったマリウスは、あの日から少々・・・いやだいぶ?嫉妬深くなった。執着も強くなった。

 あれは、ヤンデレというやつではないのだろうか。
 ヤンデレ枠は、レイノルドだけでお腹いっぱいである。

 まぁ、そんなマリウスだけど、私は彼のことが大好きなのだから、仕方ない。
 あの、攻略対象だからとか子供だからとか言っていた日々が嘘のようだ。

 というわけで、今日も私は、婚姻準備に忙しく過ごしているのである。

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