「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

躊躇い

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 マリウスと手を繋ぎ、目についた雑貨店に入る。
 マリアとカイは、少し先の店に入ったようだ。

「何が欲しい物があったら言ってね」

「はい・・・」

 蕩けるような目で私を見つめるマリウスに、頷く。

 提げたバッグに入れてあるモノを、思い浮かべた。

 渡すことは出来るだろうけど・・・
やっぱり、私も自分用のも買っておくべきだったかな。

 バッグの中には、先日カイと共に街に出かけて買った、マリウスへのプレゼントが入っている。

 空色の石の付いた指輪。
値段から考えると、多分アクアマリンだと思う。

 王太子であるマリウスに贈るには、相応しくない品だと思う。

 だけどカイから、最近平民の間で、自分の瞳や髪色の石の付いた指輪を相手に贈るのが流行ってると聞いて、どうしてもマリウスに贈りたくなった。

 カイはマリアに贈って、婚約者になって欲しいって言うんだって。
 それって、プロポーズだよね。
女の子の憧れ!指輪の箱をパカっと開けて「結婚して下さい」って。

 カイって大人だから、そんなことしないのかと思ってた。
 いや。プロポーズじゃなくて、そういう流行り?を真似るみたいなこと。

 そしたら、なりふり構っていられないんだって。
 彼女は魅力的だから、他の人に奪われる前に自分のものにしたいんだって。

 確かにマリアは可愛いし、魅力的だから、他の人も好きになると思う。
 聖女ということを除外しても、マリアは本当にいい子だから。

 私はカイもマリアも好きだし、好きな2人がくっついてくれたら嬉しいから、カイに協力することにした。

 マリアの指輪のサイズをこっそり調べて、カイに教えたり、マリア好みのデザインの指輪を一緒に見に行ったり。

 その時に見つけた、アニエスの瞳の色の石の付いた指輪。

 カイは、マリアに買わせるわけにはいかないからって、自分用のも買ってたけど、私はマリウスに贈って欲しい気持ちが勝ってしまって、自分用のを買うことが出来なかった。

 王太子であるマリウスが、平民の流行を知ってるとは思えない。
 私も何も話さなかったし、カイがマリウスに話すこともないだろう。

 だから、贈られないとは分かっているのに、指輪だけは自分で買うことに躊躇いがあった。

 途中で渡せば、強請ったみたいになりそうだから、帰り際に渡そう。

 私はいつもマリウスから贈られてばっかりだから、そのお礼だって思えば良いじゃない。

 私の色を、マリウスが常に付けてくれる。王太子が安物の石を付けてるって思われたらいけないから、チェーンに通して服の下にでも付けて貰おう。

 
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