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聖女覚醒編
聖女の覚醒
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「カイとのことが、マリア嬢の聖女として真の覚醒に繋がるかもしれないね」
マリウスの言葉に、私は首を傾げた。
「どういうことですの?」
「うん?アニエスは聖女の覚醒については知らないんだね。マリア嬢は聖女としての力を持っていることが分かったけど、その力は何かのきっかけがなければ覚醒しないんだよ」
うーん。よくわからない。
きっかけがなければ覚醒しない?それは、こないだ起きたマリア誘拐事件とか?
「きっかけは、僕を癒してくれた時だね。そのことで、トリガーが外れて、聖女として覚醒した。聖女というのは癒しの存在なんだ。心穏やかに多くの人を包み込む愛情がなければ、真の聖女としての力は出せない。でも、彼女はまだ14歳で、精神的に不安定だろう?だけど、カイの愛情に包まれて過ごせば、真の覚醒も近いと思ってね」
「そう・・・なのですね。でも、真の覚醒なんかしなくても、マリアが幸せな方がいいですわ」
「アニエスならそう思うだろうね。でも、真の覚醒を果たせば、彼女は真の聖女として国からも教会からも保護される存在になる。暮らしももっと豊かにしてあげられるし、何より王太子妃になるアニエスと、対等にいつでも会えるようになるよ」
確かに、王太子妃になれば、平民であるマリアと今のように会うことは難しくなるだろう。
それに、苦しい生活をしているらしいマリアの家族を楽させたいとも思う。
だけど。
そのために、マリアが何かしたくないことをやらされたり、辛い思いをすることがあるのは嫌だ。
「大丈夫。あくまでも、聖女は象徴だから。我が国は教皇一家が優秀だからね。聖女に重い責を負わせることはないよ。そんなことになったら、僕がカイに殺されてしまう」
クスクスと笑うマリウスに、ほんの少し肩の力が抜けた。
「マリアが望むのなら、わたくしは別にかまいませんわ。わたくしはマリアに幸せになってもらいたいだけですから」
「ね、アニエス。1つ聞いていいかな?」
「ええ」
「アニエスは、カイのことを・・・好きだった?」
噴水前のベンチに腰掛けて、少し先の雑貨店に入るカイとマリアの後ろ姿を見ていた私は、マリウスの言葉に目を見開く。
「マリ様?」
「いや、アニエスを責めてるんじゃないよ。確かにカイは、男の僕からみてもいい男だから・・・」
「わたくしが幼い頃にカイを侍従としたことはご存知ですわね?」
「ああ」
「あの頃のわたくしは、自分の気持ちもマリ様の気持ちも理解っていませんでした。いつかこの婚約は解消されるのだと思い込んでいました。だから、その時にカイには一緒に領地へ行ってもらいたいと思っていたんです」
マリウスの言葉に、私は首を傾げた。
「どういうことですの?」
「うん?アニエスは聖女の覚醒については知らないんだね。マリア嬢は聖女としての力を持っていることが分かったけど、その力は何かのきっかけがなければ覚醒しないんだよ」
うーん。よくわからない。
きっかけがなければ覚醒しない?それは、こないだ起きたマリア誘拐事件とか?
「きっかけは、僕を癒してくれた時だね。そのことで、トリガーが外れて、聖女として覚醒した。聖女というのは癒しの存在なんだ。心穏やかに多くの人を包み込む愛情がなければ、真の聖女としての力は出せない。でも、彼女はまだ14歳で、精神的に不安定だろう?だけど、カイの愛情に包まれて過ごせば、真の覚醒も近いと思ってね」
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確かに、王太子妃になれば、平民であるマリアと今のように会うことは難しくなるだろう。
それに、苦しい生活をしているらしいマリアの家族を楽させたいとも思う。
だけど。
そのために、マリアが何かしたくないことをやらされたり、辛い思いをすることがあるのは嫌だ。
「大丈夫。あくまでも、聖女は象徴だから。我が国は教皇一家が優秀だからね。聖女に重い責を負わせることはないよ。そんなことになったら、僕がカイに殺されてしまう」
クスクスと笑うマリウスに、ほんの少し肩の力が抜けた。
「マリアが望むのなら、わたくしは別にかまいませんわ。わたくしはマリアに幸せになってもらいたいだけですから」
「ね、アニエス。1つ聞いていいかな?」
「ええ」
「アニエスは、カイのことを・・・好きだった?」
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「マリ様?」
「いや、アニエスを責めてるんじゃないよ。確かにカイは、男の僕からみてもいい男だから・・・」
「わたくしが幼い頃にカイを侍従としたことはご存知ですわね?」
「ああ」
「あの頃のわたくしは、自分の気持ちもマリ様の気持ちも理解っていませんでした。いつかこの婚約は解消されるのだと思い込んでいました。だから、その時にカイには一緒に領地へ行ってもらいたいと思っていたんです」
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