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聖女覚醒編

初デートの行方は2《カイ視点》

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 マリア嬢がメニューを見ているのを眺めながら、チラリと通り過ぎてきた道の先へと視線を向ける。

 ちょうど王太子殿下が、アニエス様を雑貨屋へと誘っているところだった。

 今日の、マリア嬢と出かけることに、アニエス様と王太子殿下が付いて来ていることは了承済みだ。

 出かけることが決定した後、王太子殿下から打診を受けた。

 マリア嬢を見守るという大義のもとに、アニエス様と街デートをしたいのだと。
 だから、一応付いては行くが、適度な距離感も取るし、邪魔はしないから許容して欲しいと言われた。

 さすがに正直に打ち明けられたら、断れない。

 学園を卒業されれば、婚姻されることも決まっている。
 平民のように、簡単に街歩きなどできない身分のお2人だ。

 ここは、諦めるしかないと思う。
それに、アニエス様は見守るという目的のようだが、殿下はアニエス様とのデートが目的らしいから、言われたように適度な距離感は取ってくれるだろう。

「決まった?」

「あ。ごめんなさい。これとこれ、どっちにしようか迷ってて・・・」

 視線を戻すと、マリア嬢はケーキをどちらにするか迷っているらしかった。

 可愛らしいな。

「両方頼もうか。半分ずつ食べれば良いし」

「え?え・・・と、あの・・・・・・はい」

 マリア嬢が、真っ赤になって俯いてしまった。

 しまった。恥ずかしかっただろうか。
つい、可愛らしくて、両方食べさせたいと思ってしまったのだが。

 幼い頃のアニエス様も、欲しいものを1つに絞れない時に、クラン様と半分ずつにしていたり、時には俺にまで「半分こね」って渡してきていた。

 そういえば、それを知った殿下が、随分と黒い笑みを浮かべていたな。クラン様は自慢げだったが。

 アレは、意識していない相手だからだと思うんだが。

 だからこそ、アニエス様は殿下と半分こなんてなさらなかったし、殿下と心を通わされてからは、クラン様ともされなくなった。

 マリア嬢の様子を見て、胸の奥が締めつけられる気がした。

 恥ずかしがる様子が、たまらなく愛しい。
少しでも意識してくれているのだと思えるのが、嬉しい。

 もちろん、食べたいものを食べて欲しいという気持ちもあるのだが。

 駄目だ。
彼女の気持ちが決まるまで、待つと決めたじゃないか。
 俺は平民だし男だから、結婚を早くする必要もない。

 だが、聖女である彼女を誰かに取られるのではないかという、不安があることも事実だ。

 5歳も年上だというのに。
まさか自分が、こんなに恋愛事で余裕がなくなるとは。

 アニエス様と出会えてから、俺はずっと幸せに過ごせている。

 セリオたちと暮らしていた時も不幸ではなかったが、こんなふうに誰かを好きになってそのことで悩む日が来るなんて、あの頃は思いもしなかったー





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