「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

私の鈍さと侍従がイケメンな件

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「アニエスお嬢様。よろしいでしょうか?」

 壁際で控えていたカイが、声をかけて来た。
 珍しい。カイが話に入って来るなんて。

「どうしたの?カイ」

「その、聖女様の婚約者の役目、私にお任せ願えないでしょうか」

「え?」

 え?ええ?えええ?
今、カイ何て言ったの?聖女様の婚約者の役目を任せて欲しい?

 聖女様ってマリアのことよね?
ええ?
 もしかして本当に、マリアとカイって、恋愛関係ってことなの?

 ええと。全然気づかなかったんだけど。
え?私って本当に鈍いの?

 ああっ。脳内でアニエスが盛大にため息吐いてるのが、頭に浮かぶぅ!

 だって、だって、カイは常に私の側を離れずに・・・あー。学園行ってる間とか、王宮でマリウスといる時とかは離れてるけど。

 その間は普通に、リリウム公爵家で働いているものだとばかり思ってたわ。
 いや、多分ちゃんと働いてはいたんだろうけど。

 いや。ちょっと待って。
別にまだ2人は恋人同士とは限らないじゃない。
 もしかしたら、マリアの境遇を心配したカイが・・・

 って無理があるわね。
え、え、えー。私って、そんな鈍いの?
ものすごくショックなんだけど。

「あの、かっ、カイは、その・・・」

「あのっ!アニエス様。違うんですっ!カイさんは、私が学園に早く通いたいって言ったから、きっと気を遣ってくれてるんだと思います」

「いえ。私・・・俺の本心です」

 マリアが慌てたように否定すれば、カイが侍従の時の私ではなく、俺と言い直した。

 カイが俺って言うの、ものすごく久しぶりに聞いた。
 侍従にしたばかりの頃は、俺って言ってたのに、いつのまにか私になってたんだっけ。

 カイは今までずっと、私のことを助けてくれていた。

 マリウスの気持ちを信じずに逃げ回っていた時も、カイがいてくれたから頑張って来れた。

 マリアは私の大切な女の子だ。
ヒロインだから、なんて思ってたけど、確かにマリアはヒロインに相応しい女の子だけど、それ以上に大切な大切な友達になった。

 いつも笑顔で、優しくて、健気で、頑張り屋で、本当に私のことを大切に思ってくれている友達。

 その2人が、本当に好き合ってるなら、協力は惜しまないけど、好き・・・合ってるのかな?

 私は鈍いみたいだし、ここは確認したほうが良いわよね?

 カイはおススメ物件だけど、マリアは聖女だから、貴族や王族にだって嫁げるわけだし。

「あ、あの、カイはマリアのことを、女性として好きだということでいいのかしら?もしかして、お付き合いしているの?」

「いえ。まだ申し込んではおりません。ですが、俺はマリア嬢のことを大切にしたいと思っています」

 カイの言葉に、マリアと・・・ついでに私まで赤くなった。

 カイ・・・
イケメン過ぎるよ。
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