71 / 128
聖女覚醒編
窮地2《マリア視点》
しおりを挟む
下品な言葉と引き換えに、私はお花摘みに行くことができた。
だけど当然、扉の前で男は待ったままで、逃げ出すことなど不可能だった。
往復で見た様子が、どうやら私の家と変わらないような感じだから、おそらくは平民の家だと思う。
だけど、その家の中からは他の人間の声も聞こえていて、私を連れて来た連中がいるのだと推測できた。
私の足では、見つかれば逃げきれない。
どうにか彼らが眠っているか、出かけた隙に逃げ出せないか考えないと。
「さてと、足と手を出しな」
「あっ、あの、縛られて痛いんです。拘束するのは許してもらえませんか」
「ああ?そんなわがままが通るわけが・・・いや、いいぜ。縛らないでおいてやっても」
よかった。縛られてたら、いくら機会があっても逃げられない。
そう思った私に、男はニタニタしながら手を伸ばして来た。
「ただし、服を脱ぐならな。拘束しなくても裸なら逃げ出せないからな」
「!!」
「自分で脱げないってなら、脱がしてやるぜ」
私はまだ14歳だ。
まさか、子供の私にそんなマネをしようとする人間がいるとは思ってなかった。
学園に通っていたせいかもしれない。
私の周囲にいた方々は、みんな貴族としての生き方、つまり婚姻までは清い交際をしていたから・・・
平民の中には、そういうことをいている人がいることを忘れていたのだ。
だから、反応が遅れた。
「いやっ!!」
そのまま腕を掴まれ、部屋から連れ出される。
そして、その男は別の部屋に私を放り込むと、鍵をガチャリと内側から閉めた。
さっきまでいた部屋は薄暗くて、おそらくは物置みたいなものだったのだろう、窓もなかったけど、この男の部屋なのか、部屋の奥には窓が見える。
窓に駆け寄ろうとした私は、部屋に残った男に、ベッドの上へと投げ出された。
のしかかってくる男の荒い息。男臭いベッドのシーツ。押さえつけてくる腕の強さ。
その全てに恐怖が湧き起こった。
「殺してもいいと言われているんだ。どうせなら、客を取らせてやるよ。その前に・・・ちょーっとガキだが、味見させてもらうか」
客・・・
このハイドランジア王国には娼館はないけれど、他国にはあると聞く。
しかも、殺してもいいと言われてるって。じゃあ、私は聖女だから攫われたわけではない?
だけど穢されるくらいなら。
穢れた私では、もうアニエス様に会えない。
私には、この男を突き飛ばす力はない。
でも。
舌を噛むくらいなら、私にだってできる。
アニエス様。
もう1度、会いたかった。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
私、私は・・・
伸びて来た男の手に、キツく目を瞑り、歯の間に自分の舌を挟んだ。
だけど当然、扉の前で男は待ったままで、逃げ出すことなど不可能だった。
往復で見た様子が、どうやら私の家と変わらないような感じだから、おそらくは平民の家だと思う。
だけど、その家の中からは他の人間の声も聞こえていて、私を連れて来た連中がいるのだと推測できた。
私の足では、見つかれば逃げきれない。
どうにか彼らが眠っているか、出かけた隙に逃げ出せないか考えないと。
「さてと、足と手を出しな」
「あっ、あの、縛られて痛いんです。拘束するのは許してもらえませんか」
「ああ?そんなわがままが通るわけが・・・いや、いいぜ。縛らないでおいてやっても」
よかった。縛られてたら、いくら機会があっても逃げられない。
そう思った私に、男はニタニタしながら手を伸ばして来た。
「ただし、服を脱ぐならな。拘束しなくても裸なら逃げ出せないからな」
「!!」
「自分で脱げないってなら、脱がしてやるぜ」
私はまだ14歳だ。
まさか、子供の私にそんなマネをしようとする人間がいるとは思ってなかった。
学園に通っていたせいかもしれない。
私の周囲にいた方々は、みんな貴族としての生き方、つまり婚姻までは清い交際をしていたから・・・
平民の中には、そういうことをいている人がいることを忘れていたのだ。
だから、反応が遅れた。
「いやっ!!」
そのまま腕を掴まれ、部屋から連れ出される。
そして、その男は別の部屋に私を放り込むと、鍵をガチャリと内側から閉めた。
さっきまでいた部屋は薄暗くて、おそらくは物置みたいなものだったのだろう、窓もなかったけど、この男の部屋なのか、部屋の奥には窓が見える。
窓に駆け寄ろうとした私は、部屋に残った男に、ベッドの上へと投げ出された。
のしかかってくる男の荒い息。男臭いベッドのシーツ。押さえつけてくる腕の強さ。
その全てに恐怖が湧き起こった。
「殺してもいいと言われているんだ。どうせなら、客を取らせてやるよ。その前に・・・ちょーっとガキだが、味見させてもらうか」
客・・・
このハイドランジア王国には娼館はないけれど、他国にはあると聞く。
しかも、殺してもいいと言われてるって。じゃあ、私は聖女だから攫われたわけではない?
だけど穢されるくらいなら。
穢れた私では、もうアニエス様に会えない。
私には、この男を突き飛ばす力はない。
でも。
舌を噛むくらいなら、私にだってできる。
アニエス様。
もう1度、会いたかった。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
私、私は・・・
伸びて来た男の手に、キツく目を瞑り、歯の間に自分の舌を挟んだ。
53
お気に入りに追加
8,214
あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる