「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

恐怖の魔王降臨

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「ねぇ、まさかと思うけど、レイ様って僕のことじゃないよね?」

 後ろから聞こえてきた声に、私とマリアはビクッと体を震わせた。
 おそるおそる振り返ると、そこには予想通りの人物たちが立っていて・・・

「あ!マリ様!レイ様!聞いてください。この人達が・・・」

 ビクビクしている私たちと対照的に、チェリー嬢は嬉しそうな声で、彼らに駆け寄る。

 わー。やめてやめて!
空気読んでっ!

「君さぁ、誰の許可を得て、僕に話しかけてんの?レイ様だなんて誰が呼んでいいって言ったの?」

「え?えっ、でも、レイ様はレイ様で・・・あっ、あの!マリ様。レイ様はどうして怒ら・・・」

「僕は君に名を呼ぶ権利を与えていないが?」

 困惑したチェリー嬢がマリ様に話しかけると、氷点下に下がった空気をまとったマリ様が冷たく言い放つ。

 私とマリアは、そのまま固まってしまった。
 私もそうだけど、1年間彼らを間近で見ていたマリアも、彼らの怒りのツボというものを理解している。

 マリ様は、とにかく私に関与する相手を徹底的に排除しようとする。
 私の悪口なんて言おうものなら、物理的に首と胴が離れ離れにされるくらいに。

 そして、レイノルド。
彼は、ドSである。
 レイノルドが甘い態度を取るのは、唯一イザベラ様にだけ。

 愛称呼びも、家族にすら許していないと聞く。許すのはイザベラ様のみ。

 そんな相手の地雷を踏みまくるチェリー嬢に、私とマリアの方が冷や汗タラタラである。

「君さ、ベラドンナ男爵家でどんな教育受けてんの?身分の下の者が許可なく話しかけること自体が駄目だって聞いてないの?大体、Dクラスにしか入れないような人間が、なにSクラスの人間に絡んでんの?君、本当に馬鹿?馬鹿なら馬鹿なりに、目立たないように、大人しくしてたら?別に死にたいならいつでも物理的に、その首と体を別々にしてあげるよ。それとも魔物の餌にでもなる?」

「・・・おかしいわよ。なんで?これってイベントなの?こんなのあった?」

 レイノルドの辛辣発言に滅入るでもなく、チェリー嬢はぶつぶつと呟き出した。

 いや。メンタル強いな、おい。
あのドS魔王の言葉を、スルー出来るなんて、ある意味1番の強者かもしれない。

 でもこれ、イベントでもなんでもないからね?
 もちろん、私の知らないイベントもあるかもしれない。
 しれないけど、どこに攻略対象の好感度を駄々下がりさせるイベントがあるってのよ。

「我が愛しの婚約者殿。どうして僕のアニエスが、こんなのに関わっていたのか、ゆっくり2人きりで話そうか?」

「えっ、いや、あの・・・」

「じゃあ、僕もイザベラのところへ行こうっと。マリア嬢。途中まで一緒に行くよね?」

「・・・はい」

 まだぶつぶつ言っているチェリー嬢を放置するらしく、私たちはその場を後にした。

 魔王たちに連行される形で。
だから、空気読んでってお願いしたのにぃ。






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