56 / 128
悪役令嬢回避編
告白
しおりを挟む
かれて痛い喉を我慢して、一気に言い切った。
止まったら言えない気がしたし、どもりながら告白なんていうのも、ちゃんと届かない気がしたから。
マリウス・・・ううん、マリ様にちゃんと届いただろうか?
公爵令嬢で婚約者のアニエスとしてでなく、私、山下百合としての気持ち。
「・・・」
返ってこない反応に、キツく瞑っていた目を、おそるおそる開く。
目の前のマリ様は、顔を真っ赤にしたまま固まっていた。
わー。
初めて見た。乙女ゲームの中でも、ヒロインに告白されても余裕シャクシャクだったマリ様の、赤面。
「マリ・・・様?」
「・・・ズルい」
「は?」
「目覚めただけでこんなに嬉しいのに、そんなことを言うなんて。アニエスは僕を殺したいの?」
何で告白しただけで、そんなこと言われなきゃなんないの?
だって、目覚めたと分かったらみんな来るだろうし、そしたらマリ様と2人で話す機会も中々取れないだろうし、それに・・・先延ばしにしたらアニエスに怒られそうなんだもん。
私より年上なんでしょ!しっかりしなさい!!って。
私、自分がアラサーだとか、この世界がラノベの世界かもだとか、そんなことばかりで、全然大人じゃなかった。
むしろ、アニエスやマリア達より全然子供で、マリ様の気持ちにもマリアの気持ちにも、向き合えてなかった。
すぐに大人にはなれないだろうけど、それでも、アニエスに相応しい自分になろうって決めたんだ。
「あの・・・マリ、様?」
「ずるいな、アニエスは。僕は君が僕を特別に好きだと思ってくれなくても、ずっと愛し続けていこうって、覚悟を決めたばかりなのに。そんなことを言われたら、嬉しくて我慢できなくなってしまうじゃないか」
「がま・・・ん?」
我慢ってなに?
何か、我慢させてた?我慢は体に悪いよね。引き止めて悪かったかな。
「我慢・・・は、体に、良くない・・・です。言いたいことは・・・それだけ、だったの、で、お医者様・・・呼んで下さい」
「・・・」
私をジッと見つめる、マリ様が小さく息を吐いた。
そっと右手を伸ばしてきて、私の髪を撫で、その手は瞼、頬をゆっくりと撫でていく。
温かいマリ様の手のひらが気持ち良くて、私はその手に擦り寄るように瞼を閉じた。
「本当に・・・困った子だな」
小さく呟いたマリ様の言葉に、その意味を問いかけようと開きかけた唇に、温かい何かが触れた。
驚いて目を開けると、目の前にマリ様の優しい、碧い瞳が私を映している。
「好きだ、アニエス。これまでも。そして、これからも」
マリ様の甘い囁きが、私の耳に届くのと同時に、その唇が私のそれに再び重なったー
止まったら言えない気がしたし、どもりながら告白なんていうのも、ちゃんと届かない気がしたから。
マリウス・・・ううん、マリ様にちゃんと届いただろうか?
公爵令嬢で婚約者のアニエスとしてでなく、私、山下百合としての気持ち。
「・・・」
返ってこない反応に、キツく瞑っていた目を、おそるおそる開く。
目の前のマリ様は、顔を真っ赤にしたまま固まっていた。
わー。
初めて見た。乙女ゲームの中でも、ヒロインに告白されても余裕シャクシャクだったマリ様の、赤面。
「マリ・・・様?」
「・・・ズルい」
「は?」
「目覚めただけでこんなに嬉しいのに、そんなことを言うなんて。アニエスは僕を殺したいの?」
何で告白しただけで、そんなこと言われなきゃなんないの?
だって、目覚めたと分かったらみんな来るだろうし、そしたらマリ様と2人で話す機会も中々取れないだろうし、それに・・・先延ばしにしたらアニエスに怒られそうなんだもん。
私より年上なんでしょ!しっかりしなさい!!って。
私、自分がアラサーだとか、この世界がラノベの世界かもだとか、そんなことばかりで、全然大人じゃなかった。
むしろ、アニエスやマリア達より全然子供で、マリ様の気持ちにもマリアの気持ちにも、向き合えてなかった。
すぐに大人にはなれないだろうけど、それでも、アニエスに相応しい自分になろうって決めたんだ。
「あの・・・マリ、様?」
「ずるいな、アニエスは。僕は君が僕を特別に好きだと思ってくれなくても、ずっと愛し続けていこうって、覚悟を決めたばかりなのに。そんなことを言われたら、嬉しくて我慢できなくなってしまうじゃないか」
「がま・・・ん?」
我慢ってなに?
何か、我慢させてた?我慢は体に悪いよね。引き止めて悪かったかな。
「我慢・・・は、体に、良くない・・・です。言いたいことは・・・それだけ、だったの、で、お医者様・・・呼んで下さい」
「・・・」
私をジッと見つめる、マリ様が小さく息を吐いた。
そっと右手を伸ばしてきて、私の髪を撫で、その手は瞼、頬をゆっくりと撫でていく。
温かいマリ様の手のひらが気持ち良くて、私はその手に擦り寄るように瞼を閉じた。
「本当に・・・困った子だな」
小さく呟いたマリ様の言葉に、その意味を問いかけようと開きかけた唇に、温かい何かが触れた。
驚いて目を開けると、目の前にマリ様の優しい、碧い瞳が私を映している。
「好きだ、アニエス。これまでも。そして、これからも」
マリ様の甘い囁きが、私の耳に届くのと同時に、その唇が私のそれに再び重なったー
105
お気に入りに追加
8,197
あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる