「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

告白

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 かれて痛い喉を我慢して、一気に言い切った。

 止まったら言えない気がしたし、どもりながら告白なんていうのも、ちゃんと届かない気がしたから。

 マリウス・・・ううん、マリ様にちゃんと届いただろうか?

 公爵令嬢で婚約者のアニエスとしてでなく、私、山下百合としての気持ち。

「・・・」

 返ってこない反応に、キツく瞑っていた目を、おそるおそる開く。

 目の前のマリ様は、顔を真っ赤にしたまま固まっていた。

 わー。
初めて見た。乙女ゲームの中でも、ヒロインに告白されても余裕シャクシャクだったマリ様の、赤面。

「マリ・・・様?」

「・・・ズルい」

「は?」

「目覚めただけでこんなに嬉しいのに、そんなことを言うなんて。アニエスは僕を殺したいの?」

 何で告白しただけで、そんなこと言われなきゃなんないの?
 だって、目覚めたと分かったらみんな来るだろうし、そしたらマリ様と2人で話す機会も中々取れないだろうし、それに・・・先延ばしにしたらアニエスに怒られそうなんだもん。

 私より年上なんでしょ!しっかりしなさい!!って。

 私、自分がアラサーだとか、この世界がラノベの世界かもだとか、そんなことばかりで、全然大人じゃなかった。

 むしろ、アニエスやマリア達より全然子供で、マリ様の気持ちにもマリアの気持ちにも、向き合えてなかった。

 すぐに大人にはなれないだろうけど、それでも、アニエスに相応しい自分になろうって決めたんだ。

「あの・・・マリ、様?」

「ずるいな、アニエスは。僕は君が僕を特別に好きだと思ってくれなくても、ずっと愛し続けていこうって、覚悟を決めたばかりなのに。そんなことを言われたら、嬉しくて我慢できなくなってしまうじゃないか」

「がま・・・ん?」

 我慢ってなに?
何か、我慢させてた?我慢は体に悪いよね。引き止めて悪かったかな。

「我慢・・・は、体に、良くない・・・です。言いたいことは・・・それだけ、だったの、で、お医者様・・・呼んで下さい」

「・・・」

 私をジッと見つめる、マリ様が小さく息を吐いた。

 そっと右手を伸ばしてきて、私の髪を撫で、その手は瞼、頬をゆっくりと撫でていく。

 温かいマリ様の手のひらが気持ち良くて、私はその手に擦り寄るように瞼を閉じた。

「本当に・・・困った子だな」

 小さく呟いたマリ様の言葉に、その意味を問いかけようと開きかけた唇に、温かい何かが触れた。

 驚いて目を開けると、目の前にマリ様の優しい、碧い瞳が私を映している。

「好きだ、アニエス。これまでも。そして、これからも」

 マリ様の甘い囁きが、私の耳に届くのと同時に、その唇が私のそれに再び重なったー

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