「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

変わる気持ち。変わらない気持ち2

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 死な・・・ない?
修道院でもどこへでも行く?

 そう。アニエスは何も悪いことなんかしていない。
 ただ、マリウス殿下ことを本当に好きで、好きで。
 だから、婚約破棄されて悲しかっただけなんだ。

『貴女と婚約破棄なんて、あのマリウス殿下がするわけないと思いますけどね。それに、婚約破棄なんかした日には、あの方の方が廃籍されるんじゃないかしら』

 え?廃籍?

『もし、もしもマリウス殿下が婚約破棄してきたなら、謹んでお受けしてあげなさいな。男はあの方だけじゃありませんわ。もちろん、大好きな方にフラれたら悲しいでしょうけど、貴女にはお父様もお母様もクランも・・・それからわたくしもついていますわ』

 ふふっ。ありがとう、アニエス。
アニエスは強いね。

『わたくし、貴女に感謝していますのよ。突然、意識を失って、そのまま死んでしまうと思いましたの。貴女がわたくしの中に現れて、わたくしとして生きてくださったから、わたくし安心して眠りにつくことが出来たのです』

 そうだ。アニエスはどうして、その、眠りについちゃったの?

『わたくし、10歳の誕生日に王宮で焼き菓子を貰いましたの。後で考えると、それを渡してきた侍女に見覚えなどなかったのですが、あの日はマリウス殿下からお祝いを戴いて浮かれていたのです。その焼き菓子に、おそらく毒が入っていたのですわ。アレを口にした直後に意識が失われましたから』

 えっ?なにそれ。暗殺ってやつ?
アニエスを殺そうとしたってこと?

『わたくしは王太子殿下の婚約者。その座を狙うものは多いですわ』

 え?じゃあ、私も狙われるってこと?
だって今は私がアニエスなんだから・・・

『そうですわね。警戒しておくにこしたことはありませんけど、今は殿下が異常なまでに貴女にご執心なことは周囲に知られていますし、手を出す者もいないと思いますわ』

 異常なまでの執心?確かに大切にされてるとは思うけど。

『貴女が羨ましいですわ。あんなに誰かを真摯に想われている殿下を初めて見ましたもの。羨ましくて、そして嬉しいですわ』

 あ、アニエス・・・

『わたくしはもう死んでいるんですもの。仕方ありませんわ。人はいつ死ぬかわからないものです。ですから、貴女も自分の気持ちに素直になって、ちゃんと自分自身が望むように過ごして下さいませね?今度、こんなとこに逃げ込んできたら、ゲンコツですわよ』

 人はいつ死ぬかわからない。
そうだ。私もまさか死ぬとは思っていなかった。

 ゲンコツか。なんだかアニエスの方が、私よりずいぶんと大人みたいだ。
 お母さんに叱られてるみたいだわ。

『失礼ですわね。わたくし、貴女みたいな大きな子供を産んだ覚えはありませんわよ』

 最後に、アニエスのそんな声が聞こえた気がした。

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