「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

ヒロインと友達になる?

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「まだ赤いですわね」

 マリアの頬は、まだ少し赤くて、冷やしたタオルを当てると、マリアはほんの少し顔を顰めた。

「ごめんなさい、痛かったかしら?」

「平気です。それより、リリウム様にこんなことをさせて申し訳ありません」

「あら?わたくしでも、人を看病することくらいありましてよ?」

 普通ならないけどね。
公爵令嬢であるアニエスが、誰かを看病するなんて。
 だけど、実は1度だけあるのだ。
まだ拾って間もない頃に、カイが熱を出したことがあった。

 もちろん、アニエスは近づかないようにと言われていたんだけど、こっそり部屋に入って、濡れタオルを変えたりしたのよね。
 あの後、風邪がうつって、アナに叱られたっけ。

「リリウム様はお優しいのですね」

 ポッと頬を染めるマリアに、内心身悶える。

 可愛い。めっちゃ可愛い。
何か殿下やクランたちがメロメロ(←死語)になるの理解るわ!

 断罪はされたくないけど、婚約解消ならばっちこいだよ!

「あ、あの・・・リリウム様は王子様の婚約者なのですね」

「マリア様。王子様という敬称は正しくありませんわ。殿下とお呼びするべきでしてよ」

「あ。すみません」

「いいえ?マリア様がご存知なくても当然のことですもの。ですが、先ほどのように難を付けて来るものもいるでしょうから。あ、それと確かにわたくしと殿下は生まれた時からの婚約者ですわ。わたくしたちは貴族ですから、どうしても家と家の契約という形の婚約は発生しますのよ」

 マリアの疑問に答えながら、さりげなく私と殿下に恋愛感情はないんだよ、と伝える。
 だから安心して、殿下のこと好きになってくれていいから。

「そう・・・なんですね。あのっ!リリウム様は・・・」

「わたくしもマリア様と呼ばせていただいていますし、どうぞマリア様もアニエスとお呼びになって下さいませ」

「そんな!私みたいな平民が、リリウム様のように高貴な方をお名前で呼ぶなんて」

 うん。まぁ、そうなんだけど。
それに、マリアは平民だから、家名がないからマリアと呼ぶしかないんだけど。

 なんだか、いい子みたいなんだもん。
どうせなら友達になって、殿下との仲も取り持ったりしちゃって、それから、断罪も回避できたらなぁなんて・・・

「駄目・・・かしら?わたくしではマリア様のお友達にはなれないかしら」

「そっ、そんなことありません!むしろ私なんかが、リリウム様のお友達だなんて!」

 私が俯きがちにそう言うと、マリアは慌てて首をブンブンと振っている。
 あんまり振ると、めまい起こすよ?
もう一息かな?

「では、お友達になってくださる?」

「はっ、はい!私でよろしければ」

「嬉しいわ。では、アニエスと呼んでくださいませね?」

 私が念押しのように、にっこり笑ってそう言うと、マリアは赤くなったまま固まってたけど、仲良くなれば、きっと断罪回避率上がるよね?
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