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悪役令嬢回避編

ヒロイン登場

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「あなた、平民よね?本当図々しいわ。突然、魔力が生まれたなんてあり得ないわよ。何かやったんじゃないの?」

 そんな声が聞こえて、足を止めた。
ちょっと、お花摘みに行った帰りに、聞こえてきた声。

 ふと、声がした方を見ると、数人のご令嬢が誰かを取り巻いている。

 平民?平民って、ヒロイン?
え?ちょっと待って。これって、王太子ルートの出会いイベント?

 マズい。マズい。マズい。
こんなところにアニエスがいたら、マリウス殿下にアニエスがイジメをしていたって認識される。

 せっかく、友達としてそれなりの関係を築いているのに、やってもいないイジメの首謀者にされてはたまらない。

 さっさと会場に戻らなきゃ。
そう思って踵を返そうとした私は、バシッという音に振り返った。

「何をなさっているのですか?」

 気が付いたら、ヒロインと数人のご令嬢の間に立ち塞がっていた。
 いや。私が何をやってるの、だわ。
でも、手をあげたのを知らんぷりなんて出来なかった。

 ヒロインの、愛らしい頬が赤くなっていて、あきらかに頬を張られたのだとわかる。

 肩のあたりで揺れるストロベリーブロンドの髪に、ピンク色の瞳。
 間違いない。ヒロインだ。
清楚な白のワンピース姿で、乙女ゲームで見た愛らしさそのままの姿。

 ああ。魔法学園は、私服である。
だから、平民のヒロインは、自分の持っている中で1番上等なワンピースを着ているし、私も青色のワンピース姿である。

 さすがに、学園にドレスを着て来るようなことはしない。
 もちろん、丈は足首近くまであるけど。
貴族令嬢にとって、足を見せることは恥ずかしいことらしい。

 それはともかく、仮にも筆頭公爵家のご令嬢であり、王太子殿下の婚約者である私の顔は、知れ渡っているようだ。

「あ、アニエス様・・・」

「わたくしの名前を呼ぶ権利を、貴女に与えましたかしら?」

「も、申し訳ございませんっ」

 魔法学園は、今年は特別枠で平民のヒロインが入学するけど、基本は貴族しかいない。
 つまりは身分制度がある学園なのだ。
筆頭公爵家令嬢である私より上の身分なのは、王太子殿下であるマリウス殿下のみ。

 身分が下の者が、上の者の名前を許可なく呼ぶことなど許されない。
 基本は家名に様付けだ。
マリウス殿下相手なら、王太子殿下と呼ぶことになる。

 大体、親しい者でも、公の場では家名で呼ぶし、プライベートでなければ名前呼びなどしない。

 学園内なら名前呼びでもいいだろうが、それは上の者が許可した場合だ。
 当然のことながら、私は目の前のご令嬢方に許可した覚えなどない。

「さて、お話が聞こえましたけど、何をどうやれば魔力が生まれたりしますの?ぜひ、お聞かせ願いたいわ。この方は教皇様が聖女と認められた方ですのよ?教皇様の決定にご不満がありまして?」

 私の言葉に、目の前のご令嬢方は、顔を青くしている。
 全く、そんな顔をするくらいなら、イジメなんかするんじゃないわよ。

「面白い話をしてるね。僕も混ぜてくれない?」
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