「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

悪役令嬢の従者2

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 もちろん、クランは大反対した。
公爵令嬢たる私の側に、身元のわからない人間を置くのは反対だって。

 まぁ、あながち間違ってはいない。
ラノベの中では、何故か拾った浮浪児を従者とかにしてたけど、普通に考えたらあり得ないことだ。

 だけど、お父様とお母様が、何故か許可を出した。

「アニエスが決めたのなら、望み通りにする」

 そう言ってくれたお父様たちには、感謝しかない。
 クランは随分とごねてたけど、私が「認めてくれないなら、家を出て修道院に行く」と言ったら、泣く泣く諦めた。

 ああ。マリウス殿下には、もちろん事後報告だ。当然、街で拾ったなどとは言っていない。

 クランにも口止めしてある。
話したら2度とクランと口をきかないと言ったら、ものすごい勢いで頷いていたから、話すことはないだろう。

 拾ってからしばらくの間は、執事長たちに付いて学んでいたのもあって、顔合わせをしたのは、1ヶ月たってからだった。

 マリウス殿下は、私の専属が男だということが不満そうだった。

 しかも、カイは中々のイケメンさんだ。
濡羽色の髪に漆黒の瞳。
 前世で見慣れた、馴染み深い色合いの彼は、長身で、細身で、それでも肉食獣の様なしなやかさを感じさせた。

 婚約者の常に側にいるイケメン。普通に考えて嫌だと思う。

 だけど、公爵であるお父様が認めたことを、王太子とはいえ口を挟めるわけもなく、カイの存在を認めるしかなかったみたい。

 そりゃそうだ。
父親である公爵が決めた、公爵家の使用人である。
 婚約者とはいえ、文句を言える立場ではない。

 カイは、マリウス殿下やクランがエスコートしている時は、手出ししてこない。
 荷物を持って、数歩後ろに控えている。
だけど、2人がこんなふうに言い合ったり、私が困ったような顔をしている時は、さっさと私を連れて行く。

 5歳も年上なだけに、カイは大人だ。
対応もそうだし、雰囲気が異論を唱えさせない。

 たった1ヶ月で、侍従としてずっと昔からいるような、そんな振る舞いができるのだ。
 もしかしたら、貴族の生まれなのかもしれない。

 貴族だって、ずっと順風満帆に暮らしていけるわけではない。
 家が没落することだってある。もしかしたら、カイの家は没落したのかもと思う。

 そんなことは聞けないし、お父様たちからも何も聞いてないけど、完璧な所作の出来る「出来る侍従」であるカイに、最近はマリウス殿下もクランも、勝てないようである。

 今も、大人しく私の後ろからついて来ている。
 というか、殿下は本当に新入生挨拶があるよね?
 大事なヒロインとのイベントなんだから、さっさと行ったほうがいいよ?
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