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悪役令嬢回避編
婚約者の役目
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王妃様とランチをご一緒した翌日から、何故か王太子妃教育の合間に婚約者様との『語らい』の時間なるものが組み込まれた。何ゆえ?
まぁ、現在の婚約者様は、記憶の中のライトノベルのように、アニエスを憎々しげに睨んだり、文句を言ったりはしないから、別に構わないと言えば構わないんだけど。
「アニエス嬢は、普段はどんなことをされているの?」
「わたくしですか?王太子妃教育を終えたあとは、少しの読書くらいでしょうか」
「食べ物は何が好き?」
「特別、好き嫌いはありませんが、スコーンは好きです」
「色は何が好き?」
「そうですね、青・・・でしょうか」
ええい!お見合いかいっ!
というか、生まれた時から婚約者で、4歳で顔合わせしてるというのに、今頃そんなこと聞くんかい!
どんだけ婚約者に興味なかったのよ。
お姉さん、呆れを通り越して、情けなくなって来たよ。
と、ふと考える。
アニエスは、アニエスはこの婚約者様のことを何か知ってるのだろうか?
自分に興味を持ってくれていない人を、ずっと好きだったアニエス。
婚約者とはいえ、王太子の彼に自分から何かを聞くようなこと、なかったんじゃないかな。
「マリウス殿下は、何色がお好きですか?」
「・・・初めて聞かれたな。それもそうか。僕は王太子で、アニエス嬢という婚約者がいるんだから、そんなこと聞いてくる人なんていないか。そうだね、僕も青色が好きだな。晴れ渡った空の色が好きだ」
「殿下の瞳の色ですね。食べ物の好き嫌いは?」
「僕は、ピーマンが得意でないかな。母にいつも叱られてたよ」
あー。大体の子供は、あの独特の味が嫌いよね。
誰からも聞かれたことがない、か。
アニエスは、お父様やお母様だけでなく、使用人たちも「どんなお菓子がお好きですか?」とかいつも聞いてくれていた。
だけど、王太子である彼に、そんなことを聞けるのは、家族か、よほど近くに仕える人くらいだろう。
苦笑しながらも話す婚約者様の顔を見ていると、妙な使命感みたいなものが湧いて来る気がした。
これって多分、友達出来なくてボッチになってる子に声かけちゃうみたいな、そういうやつ?
うん。婚約者様。
私はあなたが、ライトノベルの中でアニエスにしたことは許せないけど、今のあなたを憎いとは思わない。
あれが実際にあった過去なら、私は多分あなたのことを永遠に許せないし、憎み続けるだろう。
だけど、アレはライトノベルの世界の中のことだ。
もしも、この先あれと同じ道筋を辿るとしても、あなたが同じ行動をしないように、導いてあげるのが、大人の役目のような、そんな気がした。
まぁ、現在の婚約者様は、記憶の中のライトノベルのように、アニエスを憎々しげに睨んだり、文句を言ったりはしないから、別に構わないと言えば構わないんだけど。
「アニエス嬢は、普段はどんなことをされているの?」
「わたくしですか?王太子妃教育を終えたあとは、少しの読書くらいでしょうか」
「食べ物は何が好き?」
「特別、好き嫌いはありませんが、スコーンは好きです」
「色は何が好き?」
「そうですね、青・・・でしょうか」
ええい!お見合いかいっ!
というか、生まれた時から婚約者で、4歳で顔合わせしてるというのに、今頃そんなこと聞くんかい!
どんだけ婚約者に興味なかったのよ。
お姉さん、呆れを通り越して、情けなくなって来たよ。
と、ふと考える。
アニエスは、アニエスはこの婚約者様のことを何か知ってるのだろうか?
自分に興味を持ってくれていない人を、ずっと好きだったアニエス。
婚約者とはいえ、王太子の彼に自分から何かを聞くようなこと、なかったんじゃないかな。
「マリウス殿下は、何色がお好きですか?」
「・・・初めて聞かれたな。それもそうか。僕は王太子で、アニエス嬢という婚約者がいるんだから、そんなこと聞いてくる人なんていないか。そうだね、僕も青色が好きだな。晴れ渡った空の色が好きだ」
「殿下の瞳の色ですね。食べ物の好き嫌いは?」
「僕は、ピーマンが得意でないかな。母にいつも叱られてたよ」
あー。大体の子供は、あの独特の味が嫌いよね。
誰からも聞かれたことがない、か。
アニエスは、お父様やお母様だけでなく、使用人たちも「どんなお菓子がお好きですか?」とかいつも聞いてくれていた。
だけど、王太子である彼に、そんなことを聞けるのは、家族か、よほど近くに仕える人くらいだろう。
苦笑しながらも話す婚約者様の顔を見ていると、妙な使命感みたいなものが湧いて来る気がした。
これって多分、友達出来なくてボッチになってる子に声かけちゃうみたいな、そういうやつ?
うん。婚約者様。
私はあなたが、ライトノベルの中でアニエスにしたことは許せないけど、今のあなたを憎いとは思わない。
あれが実際にあった過去なら、私は多分あなたのことを永遠に許せないし、憎み続けるだろう。
だけど、アレはライトノベルの世界の中のことだ。
もしも、この先あれと同じ道筋を辿るとしても、あなたが同じ行動をしないように、導いてあげるのが、大人の役目のような、そんな気がした。
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