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悪役令嬢回避編

お姉様と呼ばれました

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「あ、アニエス様っ」

 ローラ姫様に連れられて、姫様の自室と思しきお部屋へとお邪魔することになった。

 うーん。可愛らしいお部屋だわ。
ピンクの壁紙に、真っ白なテーブル。家具も真っ白で、カーテンも白のレースとピンクの花柄。

 えーと。ローラ姫様、可愛いもの好き?
もしかしてヒロインとか言わないよね?

 頭の中に、ピンクの髪に瞳で、ピンクのドレスを着てる乙女ゲーム定番のヒロインのイメージが・・・

 侍女がお茶の準備を終えて、部屋を出て行くと、向かいの席に座ったローラ姫様が、意を決したように口を開いた。

「アニエス様っ!お、お兄様のことをどう思われますか?」

 は?婚約者様のことを?
どうって、やたら顔のいい・・・子供?
 今は私のことを嫌ってないみたいだから、普通に何とも思わないけど・・・

 はっ!
もしやこれは、兄を取られたくない、ブラコン妹の牽制?

「どうとは?マリウス殿下は、ご立派な方だと思いますわ」

「そうではなくて、アニエス様はお兄様のこと、お好きですか?」

「・・・何故、そんなことを?わたくしは殿下にとって政略結婚の相手です。そこにわたくしの意思など必要ありませんわ」

 まさか、学園に通い出したら、貴女のお兄様は好きな方が出来て、私を捨てるんですよとは言えない。
 かといって、好意を持ってるように受け取られて、王宮に来る度に関わられたくない。

 ここは無難に答えておこう。
私がそう思って答えた言葉に、ローラ姫様は顔を真っ青にさせた。あれ?

「お兄様ってば・・・!アニエス様。いいえ、お姉様っ!お兄様はちょっとばかりお顔がよろしくて、お勉強もできますが、少々情緒が不足しているのです!色々と欠落しているのです!大丈夫ですっ!私がっ、私がっ・・・」

「落ち着いて下さいませ?ローラ姫様。さあ、お茶を飲んで」

 なんだか7歳の子供らしからぬ、兄を褒めてるのか貶してるのか分からない単語が出てきたけど、とりあえず、落ち着いてもらおう。

 私はローラ姫様の隣に移動して、その背中をさすりながら、紅茶のカップを姫様に持たせた。

「ふぅ。ごめんなさい、興奮してしまって。アニエスお姉様・・・お姉様と呼んでもいいですか?」

「かまいませんよ?ローラ姫様」

 婚約を解消するまでですけどね。
7歳の子供が、近所のお姉さんのことを「○○お姉ちゃん」と呼ぶのと大差ない。

「私のことも、ローラって呼んでくれませんか?」

「・・・それは」

「お願いします。お姉様、私のことお嫌いですか?」

 うーん、ローラ姫様、それはズルい。
7歳の可愛い女の子に、瞳うるうるでお願いされたら、アラサーのお姉さんは断れないよ。

 それに、なんだか、ブラコンというよりシスコンぽくない?
 さっき、婚約者様のこと、色々と欠落してるって言ってたような・・・


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