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悪役令嬢回避編
遭遇
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さっさと婚約者様とクランから離れて、王太子妃教育が行われる部屋へと向かう。
婚約者様にはエスコートをお断りしたけど、ちゃんと王宮付きの侍従が案内してくれた。
まぁ、それもそうだ。
アニエスは筆頭公爵家の令嬢であり、王太子殿下の婚約者。
当然のことながら、護衛を兼ねて誰かが常に側にいる。
もうすぐ部屋だという時に、後ろから声をかけられた。
「アニエス様っ」
振り返ると、紫色の髪と碧眼の、ピンク色のドレスを着た幼い少女が、頬を赤らめて立っていた。
「ローラ姫様。急に走り出したりなさらないでください・・・あ。リリウム公爵令嬢様、失礼いたしました」
少女の後ろから走ってきた侍従が、私に気付いて慌てて頭を下げる。
ローラ姫様・・・マリウス王太子殿下の妹か。確か3歳年下だったわね。
そういえば、乙女ゲームの中で見た国王陛下と、髪色と瞳が同じだわ。
「ローラ姫様、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう。い、いえ、そうではなくて、お、お兄様は?エスコートは?」
「あら?殿下に御用でしたの?申し訳ございません。今日は弟のクランが一緒に王宮に参りましたの。クランと共に図書室へ行かれたと思いますわ」
「クラン様と・・・?婚約者であるアニエス様のエスコートもせずに?」
うーん。さすが王族。7歳なのに、婚約者をエスコートしなきゃいけないとか理解してるんだ。
まぁ、王宮内を王女殿下が走って来たというのは、淑女として問題だけどね。
ローラ様は後で、教師に叱られることになるんじゃないかな。
「わたくしがお断りしたのですわ。毎日通っておりますもの。殿下のお手を煩わせる必要もございませんわ」
「アニエス様がお断りされた・・・あ、あのっ!アニエス様。今日、私にお時間下さいませんかっ!」
「時間ですか?ですけど、この後すぐに授業ですし・・・」
「かまいませんよ、アニエス」
部屋の扉が開いて、柔らかな金髪に、金の瞳の美しいご婦人が現れた。
会った記憶がなくても分かる。
マリウス王太子殿下とローラ姫様のお母様、王妃殿下だ。
婚約者様は、王妃様似なのね。瞳の色を除けば、そっくりだ。
「お母様」
「ローラ。走ったりしては淑女として失格ね」
「ご、ごめんなさい」
ローラ姫様がしゅんとして項垂れている。
そうか。王太子妃教育は、王妃様に教わっているのか。
「アニエス、今日はローラに付き合ってもらえるかしら?授業は大丈夫よ。貴女は優秀だから」
「王妃様の仰せの通りに」
授業が大丈夫だって言うなら、たまには休みを作って欲しいわ。
ブラコンの姫様の相手かぁ。
もしかして、何か言われるのかしら?別に構わないけど。
子供の癇癪なんて、現世のおじさんたちのパワハラに比べたらかわいいもんだしね。
婚約者様にはエスコートをお断りしたけど、ちゃんと王宮付きの侍従が案内してくれた。
まぁ、それもそうだ。
アニエスは筆頭公爵家の令嬢であり、王太子殿下の婚約者。
当然のことながら、護衛を兼ねて誰かが常に側にいる。
もうすぐ部屋だという時に、後ろから声をかけられた。
「アニエス様っ」
振り返ると、紫色の髪と碧眼の、ピンク色のドレスを着た幼い少女が、頬を赤らめて立っていた。
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「ローラ姫様、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう。い、いえ、そうではなくて、お、お兄様は?エスコートは?」
「あら?殿下に御用でしたの?申し訳ございません。今日は弟のクランが一緒に王宮に参りましたの。クランと共に図書室へ行かれたと思いますわ」
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うーん。さすが王族。7歳なのに、婚約者をエスコートしなきゃいけないとか理解してるんだ。
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「アニエス様がお断りされた・・・あ、あのっ!アニエス様。今日、私にお時間下さいませんかっ!」
「時間ですか?ですけど、この後すぐに授業ですし・・・」
「かまいませんよ、アニエス」
部屋の扉が開いて、柔らかな金髪に、金の瞳の美しいご婦人が現れた。
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「ご、ごめんなさい」
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そうか。王太子妃教育は、王妃様に教わっているのか。
「アニエス、今日はローラに付き合ってもらえるかしら?授業は大丈夫よ。貴女は優秀だから」
「王妃様の仰せの通りに」
授業が大丈夫だって言うなら、たまには休みを作って欲しいわ。
ブラコンの姫様の相手かぁ。
もしかして、何か言われるのかしら?別に構わないけど。
子供の癇癪なんて、現世のおじさんたちのパワハラに比べたらかわいいもんだしね。
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