聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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カタパルトの願い

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 マリアベルとカタパルト、アントワナ様を部屋に呼んだ。

 これからカタパルトたちがどうするかを話し合うためだ。

 シンクレア王国は、一番近いグレイ王国の属国になる可能性が高い。

 そのことに関しては、まだ話し合い中なので、ラプラスやアーバンラマの可能性もあるけど、どちらにしろシンクレア王国としての運営は他国に委ねられる。

「それで、二人の希望を聞いても?何でも聞けるわけじゃないですけど、できる限り意に添いたいと思います」

「・・・」

 二人は話し合い済みだったのだろう。頷きあった後、カタパルトが口を開いた。

「出来ることなら・・・グレイ王国で下位の貴族として生きたいと思う。本来なら平民になると言うべきなんだろうが、僕もマリアベルも今まで誰かの手を借りねば何も出来なかった。平民になっても、生きていけるわけがない」

「賢明な判断ですね」

 今までずっと着替えも食事もお風呂も他人にしてもらっていた二人が、食事を自分で作って?

 出来るわけがない。
着替えやお風呂くらいは自分でしてもらうことになるが、食事の準備や掃除洗濯などは誰かを雇わねば難しいだろう。

 アントワナ様に視線を向ける。

「アントワナ様。二人を下働きかなんかで、アントワナ様のところに置くことは可能ですか?」

「そうね。私は今、離宮にいるの。そこでなら一緒に暮らすことは出来るわ。何か仕事を与える代わりに、食事や掃除洗濯などは離宮付きの使用人たちにさせるというのはどうかしら?」

「いいですね。アントワナ様のおそばに置いた方が、変な人に目をつけられることもないでしょうし」

 とにかく世間知らずな二人である。
下位貴族になるのはいいけど、甘言を吐いてカタパルトたちを利用しようとする輩がいないとは限らない。

 なんか有り金全部巻き上げられて、変な壺とか買わされそう。

「あ、忘れてました。マリアベル、ガーディナー公爵夫妻、泣いてたそうですよ」

「え?」

「マリアベルが大怪我を負ったから、教会に捨てた・・・それ、教皇に言われたんじゃないですか?」

「え、ええ、そうよ」

 戸惑ったように、マリアベルが答える。

「教皇は公爵たちには、マリアベルは大怪我が元で亡くなったと伝えたそうですよ。遺体は酷い状態だから、教会で荼毘に付したと言って、遺骨を渡したそうです。あまりのショックに、夫人が倒れられて、公爵もこの国にいるのは辛いからと夫人の母国ラプラスで暮らしているそうです。良かったですね?お二人とも貴女が生きていると伝えたら、泣いていたそうですよ」

 まぁ、あのまま魔獣になってたら亡くなることには違いないけど、本当サイテーだわ。
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