聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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仕方ないわ

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 マリアベルのしたことを、許せるか許せないかでいうなら許せない。

 許せないけど、過ちを悔いている人間を断罪することが正しいかと言われたら、それは否だと思う。

 仕方ない。
反省していたら助けると決めてたんだから。

 私はマリアベル幼子バージョンに、手を差し伸べた。

「反省してるなら、今回だけは許してあげます。さっさとここから出ますよ」

「出て、も・・・私は、怪我、が・・・」

「ばちが当たったんですよね?」

「そう、これ、は私が、犯した罪の罰・・・」

 私は根気強く、手を差し伸べ続けた。

 無理矢理に手を掴んだのでは、助けられない。

 マリアベルが自ら、ここから出ようとしなければ、魔獣との剥離はできない。

「それでも、ここにいたらカタパルトとはもう会えないですよ?というか、貴女がここにいることで、カタパルトは死んでしまうでしょうね」

 カタパルト自身は死ぬ覚悟でいたけど、マリアベルが助かったと知れば、その覚悟も揺らぐと思う。

 カタパルトがそうであるように、マリアベルもカタパルトのことを本気で想っているのだろう。

 目に見えて、動揺し始めた。

「おね、がい!カタパルト様、を助けて。私、はどうなって、もいい、から」

「なら、この手を取りなさい」

「・・・」

「カタパルトが死んでもいいんですか?」

 ほぼほぼ、脅迫のようなものだったけど、マリアベルはおずおずと私の手に自分のそれを重ねた。

 パキパキ!

 音を立てて、蛇と化していた皮膚が人のそれに戻っていく。

 魔獣化していたせいなのか、それとも何か他の理由があるのか分からないが、マリアベルの容姿は、元の・・・私の罠にかかる前の姿に戻っていた。

「あ・・・」

 マリアベルは、自分の手のひらを見つめ、ポロポロと涙を流した。

 人の姿に戻ったことで、周囲を警戒していたシキがフッと息を吐いた。

「成功か。これからどうする?」

「約束したので、カタパルトを助けに行きます」

 カタパルトの名に反応したマリアベルが、顔を上げる。

「カタパルトのいる場所は少々危険ですが、どうしますか?結界を張りますからここで待っていても大丈夫ですよ?」

「行く・・・行きます!」

 置いていっても連れていっても、手間は変わらないけど、そばにいる方が安全と判断した。

 私の結界を教皇が破れるとは思わないけど、何事にも万が一はあるから。

 移動するために癒しをかけてから、結界をマリアベルの周囲に張る。

 その過程で、ふと気付いた。

「聖力が・・・消えてますね」

「・・・きっと相応しくないからだわ」

「その理屈なら、教皇に聖力はあるはずないんですが」

 私の言葉にシキもマリアベルも、それはそうだと頷き・・・笑った。
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