聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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この次は〜シンクレア王国王太子視点〜

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 扉を閉めた後、振り返る。

 その扉の向こうにいるカルディア帝国皇帝陛下と、イアと名乗った彼女を頭に思い浮かべた。

 いや、名乗ってなかったかな。
皇帝陛下が「イア」だと言ったんだったか。

 多分・・・
九分九厘、彼女は聖女ティアラだろう。

 最初にグレイ王国とシンクレア王国の国境付近で出会った時は、あの黒髪でティアラだと思ったけど、顔を見たときに本人と皇帝陛下に人違いだと言われて・・・なんとなくだが別人か、と思った。

 だが今日顔を見て、やっぱりイアという少女は、ティアラだと思った。

 何故かと問われてもわからないから、そんな気がするとしか言いようがない。

 実際、ティアラともほとんど顔を合わせたことがないから、やっぱり別人だと言われればそうかもしれない。

 あんなに連れ戻さなければと思っていたのに、今は彼女がティアラだろうとイアだろうと、どちらでもかまわなかった。

 父上の執務室で、教皇と父上が何やら話しているのを確認して、出入り口に持っていた大量の魔法石を置く。

 ロクでもない打ち合わせ中なのだろう。扉の前に護衛もいないのが幸いした。

 まぁ、最近は魔獣の発生で、王宮騎士も多く王宮外での討伐にあたっているから、護衛も数が足りないのだが。

 平民の聖女はいつのまにか逃げ出していたし、下位貴族の聖女は皇帝陛下が引き取ってくれた。

「マリアベル・・・」

 ピンク色のふわふわした髪を揺らし、愛らしい笑みを浮かべるマリアベルを思い出す。

 公爵令嬢として生まれ、聖女としての力も持っていたマリアベル。

 彼女が自分の婚約者になるのだと、疑いもしなかった。

 だが、ティアラの聖女としての力の強さに、父上と教皇はマリアベルではなくティアラを僕の婚約者とした。

 伯爵家の養女になってはいるが、ティアラは孤児だ。

 王太子妃になんてなれるわけがない。
 なのに父上も教皇も、許してくれなかった。

 だから、婚約破棄をした。

 もし・・・
あの時、マリアベルのことを諦めてティアラとの婚約を継続していたなら、マリアベルは生きていたのだろうか?

 マリアベルが何故あんな怪我を負っていたのかは知らない。

 ガーディナー公爵夫妻も知らないと言っていたし、他の高位貴族の聖女も知らないと言っていた。

 もしかしたら、教皇が何かしたのかもしれない。

 分かるのは、もうマリアベルを抱きしめることは出来ないということだけだ。

 だけど、マリアベルだけを死なせたりしない。

 僕の大切なマリアベルをあんなふうにした教皇も、父上も、道連れにするから。

 だから、マリアベル。
次に生まれ変わったら、今度こそ一緒になろう。



 
 
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