聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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別れ

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「分かった。その時はこちらで片付けよう」

 カタパルトにそう答えるシキは、私の顔を見なかった。

 多分、私が反対しようと賛成しようと、自分はカタパルトの願いを叶えようと決めているのだと思う。

「ありがとう。教皇は今、父上と話し合いをしているはずだ。それを確認したら、魔法石に魔力を流す。火の手が上がるからすぐに分かるだろう。二人はどうする?」

「そうだな。姿を消して、国王と教皇を見張っておこう。逃げ出しそうなら、始末する」

「そうか。うん。二人と出会っていて良かったよ。多分、僕だけでは復讐は完遂出来なかったかもしれない」

 そう言って笑うカタパルトに、私は複雑な思いを抱いていた。

 複雑といっても、好きとかそういうんじゃない。

 ただ、人って変わるんだなぁって思っただけだ。

 あんなに傲慢で、王族である自分のことをまるで神かのような態度だったカタパルトが、自分ができないことを語れるなんて。

「じゃあ、行ってくる」

 そう言って、背中を向けたカタパルトが扉に手をかけたまま立ち止まった。

「マリアベルを・・・救うことは出来るだろうか?」

「・・・」

 シキが私の顔を見る。
私は黙って首を横に振った。

 教皇の言っていた聖女が、あの平民の聖女だったのだとしたら、異常種になった時点で彼女の意識はなかったと思う。

 あのドラゴンは傲慢そのもので、私の知っている聖女ではなかった。

 もちろんあの時の私は、ドラゴンが元聖女を核にしているとは知らなかったから、ドラゴンの発言を聞いてアウトと判断して倒したけど・・・

 語りかけたなら、マリアベルの精神は反応するのだろうか?

「多分・・・多分ですけど、魔石に聖力と生命力を吸い取られた時点で・・・」

「そう、か。助けられないんだな」

「もし、意識が戻ったとしても、元の人間に戻すことは難しいかと思います」

 そして戻せたとしても、マリアベルは瀕死の状態だった。

 もちろん癒すことは出来るけど、自業自得の傷を癒すことが正しいのか、私には分からない。

 反省しているなら癒そうと思うかもしれないし、やっぱり許せないと思うかもしれない。

「死んだ人間は生き返らせることが出来ない・・・か。ははっ。こんな時にティアラの言っていたことを思い出すなんてな」

「・・・」

「炎で魔獣化したマリアベルが死ねば良いが、生き残ったなら・・・できれば苦しまずに逝かせてやってくれ」

「・・・わかりました。出来る限りのことはします」

 私は決してカタパルトを好きではないけれど、でも、この真摯な願いを無視は出来ない。

「それから・・・ティアラに、この国の筆頭聖女に会ったら・・・いや、何でもない。母上にすまないと伝えて欲しい」

 私宛ティアラに何かを言いかけて首を振ると、カタパルトは部屋を出て行った。
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