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嫌いだったのに
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「教皇が入った部屋に、僕は入ることは出来なかった」
ああ。あそこには結界が張られていたから。
「でも、開いた扉の隙間から、傷だらけの・・・マリアベルが見えた。綺麗だったピンク色の髪も、艶やかな唇も、白く綺麗な肌も、何ひとつなくて、でもそれがマリアベルだと何故か思ったんだ」
「・・・そうか」
「教皇がマリアベルに言っているのが聞こえた。『役立たず』って。『せめて魔獣になって他国を脅かして来い』って。マリアベルが何をしたと言うんだ。確かに聖女としてはティアラに劣ってた。だけど、だけど、王太子妃には相応しかったんだ。いや、相応しくなかったとしても、僕はマリアベルが好きだったんだ!」
マリアベルが何もしていないとは言えない。
少なくとも彼女は、私の大切なクロを傷つけた。
だけど、だからといって教皇にも国王にも、彼女を魔獣にする権利なんてない。
それに、カタパルトがこれほどまでにマリアベルを好きだったなんて、私は気付いてなかった。
クロにしたことは許せないし、彼女の自業自得だと思うけど、思うけど・・・違う罰にしていたら、彼女は魔獣にされなかったかもしれない。
不意に右手にシキの指が触れた。
そのままギュッと握られる。
顔を見上げても、シキはカタパルトを見つめたままだったけど、その手が「大丈夫だ」って言ってる気がした。
「大丈夫だ。ティアは間違ってない」
その手がそう言ってくれてる気がして、シキを見上げていた顔を伏せる。
なんだか涙が出そうな気がして。
「それでカタパルトはどうするつもりなんだ」
「マリアベルを殺した父上と教皇を、絶対に殺す。幸いにも聖女たちは皇帝陛下が連れて行ってくれた。残っているのは、高位貴族と騎士たちだ。火を放つのは王族の居住区だ。逃げられないように一気に火が回るようにする。剣で殺せれば良いけど、僕は魔法も剣も人並みだから・・・こうなると、母上がグレイ王国に帰っていて良かった」
「・・・助けは必要か?」
「二人が火に巻かれるとは思わないけど、怪我をしないように早く立ち去って・・・と言いたいところだけど、もし、もし僕が父上と教皇を殺し損ねたら、その時は頼んでも良いかな?」
私は、カタパルトのことが嫌いだった。
傲慢で、自分勝手で。
だから、婚約破棄も国外追放も喜んで承諾した。
頭の中も空っぽで、きっと何も考えていない。考える能力もないって思ってた。
だけど今目の前にいるカタパルトは、母親であるアントワナ様のことを気遣い、私たちのことも気にかけることが出来ている。
人って・・・
変わるんだ。変われるんだ。
今のカタパルトなら、アントワナ様も手を差し出すと思うのに。
どうしてこんなことになったんだろう。
ああ。あそこには結界が張られていたから。
「でも、開いた扉の隙間から、傷だらけの・・・マリアベルが見えた。綺麗だったピンク色の髪も、艶やかな唇も、白く綺麗な肌も、何ひとつなくて、でもそれがマリアベルだと何故か思ったんだ」
「・・・そうか」
「教皇がマリアベルに言っているのが聞こえた。『役立たず』って。『せめて魔獣になって他国を脅かして来い』って。マリアベルが何をしたと言うんだ。確かに聖女としてはティアラに劣ってた。だけど、だけど、王太子妃には相応しかったんだ。いや、相応しくなかったとしても、僕はマリアベルが好きだったんだ!」
マリアベルが何もしていないとは言えない。
少なくとも彼女は、私の大切なクロを傷つけた。
だけど、だからといって教皇にも国王にも、彼女を魔獣にする権利なんてない。
それに、カタパルトがこれほどまでにマリアベルを好きだったなんて、私は気付いてなかった。
クロにしたことは許せないし、彼女の自業自得だと思うけど、思うけど・・・違う罰にしていたら、彼女は魔獣にされなかったかもしれない。
不意に右手にシキの指が触れた。
そのままギュッと握られる。
顔を見上げても、シキはカタパルトを見つめたままだったけど、その手が「大丈夫だ」って言ってる気がした。
「大丈夫だ。ティアは間違ってない」
その手がそう言ってくれてる気がして、シキを見上げていた顔を伏せる。
なんだか涙が出そうな気がして。
「それでカタパルトはどうするつもりなんだ」
「マリアベルを殺した父上と教皇を、絶対に殺す。幸いにも聖女たちは皇帝陛下が連れて行ってくれた。残っているのは、高位貴族と騎士たちだ。火を放つのは王族の居住区だ。逃げられないように一気に火が回るようにする。剣で殺せれば良いけど、僕は魔法も剣も人並みだから・・・こうなると、母上がグレイ王国に帰っていて良かった」
「・・・助けは必要か?」
「二人が火に巻かれるとは思わないけど、怪我をしないように早く立ち去って・・・と言いたいところだけど、もし、もし僕が父上と教皇を殺し損ねたら、その時は頼んでも良いかな?」
私は、カタパルトのことが嫌いだった。
傲慢で、自分勝手で。
だから、婚約破棄も国外追放も喜んで承諾した。
頭の中も空っぽで、きっと何も考えていない。考える能力もないって思ってた。
だけど今目の前にいるカタパルトは、母親であるアントワナ様のことを気遣い、私たちのことも気にかけることが出来ている。
人って・・・
変わるんだ。変われるんだ。
今のカタパルトなら、アントワナ様も手を差し出すと思うのに。
どうしてこんなことになったんだろう。
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