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許せないけど、終わらせてあげる
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おそらくは、私の罠によりマリアベル公爵令嬢は瀕死の状態だったと思う。
それは前回、クロが死にかけていたことからも想像できる。
そして、それを見た国王と教皇は、彼女の体を魔獣の異常種を生み出すための母体にした。
魔石を埋め込み、それに聖力を吸い取らせる。
ポーションを使い、死なないように繋ぎ止めながら魔石を育てる。
これはあくまでも想像だ。
だけど現実として、目の前で公爵令嬢の姿は、人の姿から魔物のソレへと変貌を始めた。
「元の核が蛇だったか」
「・・・みたいですね」
ちなみに私は蛇が大嫌いだ。
大蛇の本体に女性体と思われる上半身。蛇のような目と裂けた口、髪はうねっていて蛇のようだ。
繰り返そう。私は蛇が大嫌いだ。
と、シキが風魔法を放った。
元は人間だったことが分かる上半身に当たり、青銅色の腕が千切れる。
真っ赤な血が流れると、ビキビキという音と共に下半身の蛇部分が肩あたりまで埋め尽くし始めた。
そして数分後、それはほとんどが蛇と化した。
その目がルビー色なことだけが、元が公爵令嬢だったことを示している。
私とシキは、目の前で魔獣に変わる彼女を見ていたから人間だったと分かるけど、知らない人からすればコレはただの魔獣だ。
もしかしたら・・・
今まで倒した異常種は、魔石によって変貌させられた人間なのかもしれない。
その考えに至ったのは、私だけではないみたいだった。
「アイツらこそ・・・化け物か」
人間を魔物に変える。
確かに、それはもう人のすることではない。
倒せなくはないが、助けることは出来ないと思う。
彼女から魔石を抜いたとしても、人間に戻れるとは限らないし、戻れたとしてもそれは死体でしかない。
それは、彼女がクロにしたことの報いだ。
それに関しては、私は許せないし許そうとも思わないし、同情もしない。
真っ赤な瞳が、私を見ている気がした。
もしかしたら僅かに、人としての自我が残っている?
それとも、私を憎いと思う感情の残滓か。
私は彼女に関してというか、ほとんどの聖女に対して、何の感情も持っていなかった。
彼女たちは私のことを疎ましく思っていたらしいけど、私からしたら自由な彼女たちが羨ましかった。
私は孤児だから、親と暮らしたいという感情はない。
だけど、自分を大切だと思い守ってくれる家族という存在に憧れはあったと思う。
それを持っているからといって、今も昔も彼女にも他の聖女にも、特別なんの感情もない。
好かれなくてもなんとも思わないし、嫌われててもなんとも思わない。
ただ・・・
「クロを傷つけたことは許せないけど、終わらせてあげるよ」
それは前回、クロが死にかけていたことからも想像できる。
そして、それを見た国王と教皇は、彼女の体を魔獣の異常種を生み出すための母体にした。
魔石を埋め込み、それに聖力を吸い取らせる。
ポーションを使い、死なないように繋ぎ止めながら魔石を育てる。
これはあくまでも想像だ。
だけど現実として、目の前で公爵令嬢の姿は、人の姿から魔物のソレへと変貌を始めた。
「元の核が蛇だったか」
「・・・みたいですね」
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大蛇の本体に女性体と思われる上半身。蛇のような目と裂けた口、髪はうねっていて蛇のようだ。
繰り返そう。私は蛇が大嫌いだ。
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そして数分後、それはほとんどが蛇と化した。
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もしかしたら・・・
今まで倒した異常種は、魔石によって変貌させられた人間なのかもしれない。
その考えに至ったのは、私だけではないみたいだった。
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確かに、それはもう人のすることではない。
倒せなくはないが、助けることは出来ないと思う。
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それは、彼女がクロにしたことの報いだ。
それに関しては、私は許せないし許そうとも思わないし、同情もしない。
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もしかしたら僅かに、人としての自我が残っている?
それとも、私を憎いと思う感情の残滓か。
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だけど、自分を大切だと思い守ってくれる家族という存在に憧れはあったと思う。
それを持っているからといって、今も昔も彼女にも他の聖女にも、特別なんの感情もない。
好かれなくてもなんとも思わないし、嫌われててもなんとも思わない。
ただ・・・
「クロを傷つけたことは許せないけど、終わらせてあげるよ」
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