聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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諸悪の根源

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 聞き捨てならない単語に、私とシキは顔を見合わせる。

 まぁ、お互い透明になってるから、見合わせているつもり、でしかないけど。

 他国に結界石やポーションを売って利益を得るために、この二人が異常種を作り出した、ということ?

 私があのまま筆頭聖女としてこの国にいれば、どれだけ異常種が出たとしても、最悪でも王宮と教会は無事。

 自分たちが安全だから、利益のためにあんなものを生み出した?

 シキと繋いだ手がギュッと握られ、私はハッとした。

 いけない。
怒りに任せて魔力が溢れ出したら、国王はともかく教皇に気付かれてしまう。

 でも、そうか。
諸悪の根源はここにあったんだ。

 その後、国王と教皇は今後の対策について話していたけど、よくは聞いていない。

 どちらにしろ彼らになんてないんだから。

 私とシキは、教皇が出て行くタイミングに合わせて部屋を出た。

 とりあえず、まずはあの令嬢聖女を探そう。

 彼女がクロに手をかけた本人なら、私の張った罠にかかったということよね?

 なら、私の魔力の残滓を追えばいい。

「ね、シキ」

「なに?あんまり話さない方が」

 確かに周囲に誰もいないけど、話し声だけ聞こえたら幽霊騒ぎよね。

 それはそれで面白いけど。

「ん。分かってる。ひとつだけ言いたくて」

「ん?」

「ついてきてくれてありがとう」

 シキが付いてきてくれて良かった。

 私ひとりだったら感情に任せて、彼らを八つ裂きにするところだった。

 別にそれを悪いとも思わない自分がいる。

 でも、今こうしてここにいて思うの。

 誰かを自分の苛立ちだけで殺して、その手でクロを抱いて、私は何も思わないだろうかって。

 クロだけじゃない。
アルヴァン様のお子様のジュリアンくんとビアンカちゃんの頭を、その手で撫でてあげることが出来る?

 もちろん、この先誰かを守るために人を手にかけることがあるかもしれない。

 クロが、ビアンカちゃんが、ジュリアンくんが、誰かに殺されそうになっていたら、私はその相手を殺してでも救おうと思うだろう。

 でも、違う。
これは私の私怨だ。

「ティアの思って決めたことなら、僕もアルヴァンもクロも従う。ティアを嫌いになったりしないし、手助けできることはなんでもやる。だから、迷わなくていいんだ」

「・・・シキって、かっこいいね」

「なら、婚約者になってくれよ」

「ふふっ。それとこれとは話が別」

 ああ。なんだろう。
クロのことを聞いてからささくれ立っていた気持ちが、まぁるくなっていく気がする。

 公爵令嬢も国王も教皇も、許すつもりはないけど、後悔しない判断ができる気がした。
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