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私のやるべきこと
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黙々と結界石を作る。
その様子をジッと見ていたシキは、何かを言おうとしては口をつぐんでいる。
ひと段落したところで、私は振り返った。
「何か言いたいことが?」
何を言いたいか、なんとなく察してはいるけど、気付かないフリで問いかけた。
「その令嬢を・・・潰しに行くつもりか」
「・・・そうだと言ったら?」
「直接手を下すなら、僕がやろう。僕は、これまでもこれからも、人を粛清していく。だから一人くらい増えても同じだ」
私は直接、人に手をかけたことはない。
クロの件のように、罠をかけて同じ痛みを負うようにしたことはあっても、直接的な攻撃は魔獣にはしても人にはない。
だけど、あの人のことは許せないと思っている。
オズワルドの婚約者になったことは、別にいい。
筆頭聖女の座のことも気にしていない。
下位貴族や平民の聖女に対する態度の悪さも、まぁ許容してもいい。
でも、クロを傷つけたことだけは許せない。
私が嫌いなら、直接私に来ればいいのだ。
「シキに、責任を負わせるつもりはありません。私のすることは私が責任を負います」
「会話の内容からして、クロに関することなんだろ?クロはナイトの子供だ。誰かに連れ去られたクロをティアが助けてくれたことで、ナイトと会わせてやることが出来た。なら、その大事なクロのためなら、僕も手を貸したい」
嘘ではないだろう。
シキは、ナイトのことを大切にしているし、その子供のクロのことも大事だと思ってくれている。
でもそれ以上に、私が人を傷つけることで責を負うことを気にしてくれているのだ。
「陛下もティア様も。そういう役目は、私がやりますよ」
「アルヴァン」
「我々はそういう役目のためにいるんですから。もちろん、問い詰めたりはお任せしますけど、最後の処罰をお二人がやる必要はありませんよ」
私はゆっくりと首を横に振った。
アルヴァン様の、可愛いお子様たちのためにも、そんな役目をアルヴァン様にさせたくない。
もちろん、皇帝陛下の護衛であるアルヴァン様は、人を手にかけることもあるだろう。
でも、それは職務だ。
己の全てをもってシキを守るのがアルヴァン様の役目だから。
でも、私の個人的な復讐のために、シキやアルヴァン様を巻き込むのは、違うと思う。
「ティアは頑固だな。仕方ない。ティアのしたいことの邪魔はしたくないからな。だが、同行はさせてくれ。そして無理だと思ったら、僕にやらせると約束してくれ」
そう。
これは私の『やりたいこと』だ。
シキにやらせるつもりはない。だけど、同行することには頷いた。
その様子をジッと見ていたシキは、何かを言おうとしては口をつぐんでいる。
ひと段落したところで、私は振り返った。
「何か言いたいことが?」
何を言いたいか、なんとなく察してはいるけど、気付かないフリで問いかけた。
「その令嬢を・・・潰しに行くつもりか」
「・・・そうだと言ったら?」
「直接手を下すなら、僕がやろう。僕は、これまでもこれからも、人を粛清していく。だから一人くらい増えても同じだ」
私は直接、人に手をかけたことはない。
クロの件のように、罠をかけて同じ痛みを負うようにしたことはあっても、直接的な攻撃は魔獣にはしても人にはない。
だけど、あの人のことは許せないと思っている。
オズワルドの婚約者になったことは、別にいい。
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でも、クロを傷つけたことだけは許せない。
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「シキに、責任を負わせるつもりはありません。私のすることは私が責任を負います」
「会話の内容からして、クロに関することなんだろ?クロはナイトの子供だ。誰かに連れ去られたクロをティアが助けてくれたことで、ナイトと会わせてやることが出来た。なら、その大事なクロのためなら、僕も手を貸したい」
嘘ではないだろう。
シキは、ナイトのことを大切にしているし、その子供のクロのことも大事だと思ってくれている。
でもそれ以上に、私が人を傷つけることで責を負うことを気にしてくれているのだ。
「陛下もティア様も。そういう役目は、私がやりますよ」
「アルヴァン」
「我々はそういう役目のためにいるんですから。もちろん、問い詰めたりはお任せしますけど、最後の処罰をお二人がやる必要はありませんよ」
私はゆっくりと首を横に振った。
アルヴァン様の、可愛いお子様たちのためにも、そんな役目をアルヴァン様にさせたくない。
もちろん、皇帝陛下の護衛であるアルヴァン様は、人を手にかけることもあるだろう。
でも、それは職務だ。
己の全てをもってシキを守るのがアルヴァン様の役目だから。
でも、私の個人的な復讐のために、シキやアルヴァン様を巻き込むのは、違うと思う。
「ティアは頑固だな。仕方ない。ティアのしたいことの邪魔はしたくないからな。だが、同行はさせてくれ。そして無理だと思ったら、僕にやらせると約束してくれ」
そう。
これは私の『やりたいこと』だ。
シキにやらせるつもりはない。だけど、同行することには頷いた。
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