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理由は多分・・・

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 カタパルトが、下位貴族の令嬢たちの貴族籍の剥奪の書面を書いた。

 これがないと、彼女たちは勝手に国を出たことで罰せられるのだ。

「じゃあ、これはこちらがこっそりと出しておく。すぐにバレないように処理済みの書類に紛れ込ませておこう」

 多分だけど、アントワナ様もいないから、公務は滞っているはず。

 溜まった書類の中に紛れ込ませば、しばらくはバレないだろう。

 バレる頃には、シンクレア王国は滅んでるかもしれない。

「どうやって戻ったのかと問われたら、護衛が命がけで逃がしてくれたと答えろ。俺やイアの名を出したら、その首を落とす」

「ひっ!わ、分かった。言わない!絶対に言わないっ!」

 まぁ別に言ったところで、文句を言われても知らないと言い張ればいい話だけど。

 それに、下位貴族と平民の聖女がいなくなれば、王宮の結界も一週間しか保たない。

 高位貴族のご令嬢たちが、私がいなくなってから心を改めてお祈りとかしてたなら、元々の資質もあるけどそれなりの力にはなっているはず。

 でも、今のこの国の様子を見る限り、それはあり得なさそうなのよね。

 もしかしたら、もうほとんど聖力はなくなっているかも。

 教皇は聖力は高かったけど、確かラプラスに行って追い出されたんだよね?

 まだ時間的に帰れてないかな?

「それでは、彼女たちは連れて行く」

「あ、ああ」

「役に立ったお礼に、ひとつプレゼントをあげます」

 私は小さな石をカタパルトに渡した。

「なんだ?石ころ?」

「一度だけですが、どんな攻撃も防ぎます。ただし一度だけですし、攻撃の強弱は問いません」

 私が、そんな物を差し出すとは思わなかったのだろう。
 シキが驚いた顔をしている。

 別に他意はない、つもりだ。
言葉通り、役に立ったから。

 カタパルトのことは好きではないし、馬鹿だと思っているけど、彼が馬鹿で婚約破棄の上に国外追放してくれなければ、私は今こんなふうに自由に過ごせなかった。

 それに、下位貴族の聖女たちを国外に連れ出すためには、それぞれの当主か王族の許可が必要だった。

 その意味でも役に立ってくれたと思う。

 本人は馬鹿なせいか、重要性が分かってないけど。

 この石は結界石の簡易版だ。
カタパルトに言ったように、一度だけ攻撃を防ぐ。

 ただし、これも忠告したが、攻撃の強弱は関係ない。

 国王に拳骨を落とされるのも、魔獣に襲われるのも同じ。

 私は何故、カタパルトにコレを渡そうと思ったんだろう?

 報酬なら、ここまで送ったことで十分なのに・・・

 ああ。そうか。
アントワナ様の息子、だからだ。

 アントワナ様のために・・・
カタパルトに生き残れるチャンスを与えたいと思ったんだ・・・
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