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帰りに少し寄り道をして
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改めて聞くと、グレイ王国のことが気になった。
アントワナ様も国王陛下も、私に好意的で、シンクレア王国と断絶してくれると言ってくれた。
アントワナ様にとっては、あんなでもお腹を痛めて産んだ息子だろうに。
だからこそ、私側に付いてくれたアントワナ様に危害がないようにしたい。
「少し寄り道したいのですが」
「グレイ王国か。その異常種の魔石だけでは足りないだろう。国境付近でいくつか狩るか?それとも、カルディアに戻って在庫の魔石を取って来るか?」
行くなとも、せっかく手に入れた魔石を使うなとも言わない。
騎士団が集めたものや、ギルドに依頼して集めた魔石をグレイ王国のために使えと言ってくれる。
シキの気持ちに応えられないことが、無性に悔しく感じた。
シキ本人は好きだ。
出会いは最悪だったけど、シキの隣は思っていたよりも心地いい。
だけど、私は皇后にはなれない。
そんな覚悟はない。その覚悟を持てるほど、シキを好きで仕方ないとは思えない。
「あれはカルディア帝国のための魔石ですから。少しシンクレアとの国境付近で狩りましょう」
「どのくらい必要だ?」
「とりあえず、通常の魔石が十個もあればシンクレア王国側からは入れなくなると思います。国全部を覆うとなると、街や村の数が正確に必要になりますから」
シキの存在が私の中で大きくなる前に、少し離れた方が良いのかもしれない。
考えることは色々あるけど、今は今しなきゃいけないことをしよう。
「転移で飛びましょう。遅くなるとアルヴァン様に叱られます」
「ああ」
「そういえば、クラウド様たちはいつ頃カルディアに来られるんですか?」
魔石を集めたら、婚約者様と一緒に来ると言ってたけど。
グレイ王国へ転移する直前、ふと思い出して聞いてみた。
「クラウドの方は、あと一週間もすれば来るだろう。グレンのほうはもう少しかかるみたいだな」
「そうなのですね。余裕があれば、彼らの分も狩っておいても良いですね」
シンクレア王国を救おうとは思わないけど、私とシキが一緒なら、相当数狩れると思う。
予備として狩っておいても良い気がする。
「・・・ティアの思うようにすればいい。ただ、無理をすることはない。アイツらはアイツらで、ちゃんと準備して来るはずだ」
「そうですね。まずはグレイ王国の結界のことを考えることにします」
カルディア帝国の結界は、今のところ正常に機能している。
異常種の魔石を加工して、範囲ではなく時間を長くもたせるような結界石を作った。
おかげで何とか、本来なら一週間しかもたない結界石が、半年はもつようになった。
ただ、聖力を込めなければ、結界石はただの石ころになってしまう。
先のことを、考えるべきなのかもしれない。
アントワナ様も国王陛下も、私に好意的で、シンクレア王国と断絶してくれると言ってくれた。
アントワナ様にとっては、あんなでもお腹を痛めて産んだ息子だろうに。
だからこそ、私側に付いてくれたアントワナ様に危害がないようにしたい。
「少し寄り道したいのですが」
「グレイ王国か。その異常種の魔石だけでは足りないだろう。国境付近でいくつか狩るか?それとも、カルディアに戻って在庫の魔石を取って来るか?」
行くなとも、せっかく手に入れた魔石を使うなとも言わない。
騎士団が集めたものや、ギルドに依頼して集めた魔石をグレイ王国のために使えと言ってくれる。
シキの気持ちに応えられないことが、無性に悔しく感じた。
シキ本人は好きだ。
出会いは最悪だったけど、シキの隣は思っていたよりも心地いい。
だけど、私は皇后にはなれない。
そんな覚悟はない。その覚悟を持てるほど、シキを好きで仕方ないとは思えない。
「あれはカルディア帝国のための魔石ですから。少しシンクレアとの国境付近で狩りましょう」
「どのくらい必要だ?」
「とりあえず、通常の魔石が十個もあればシンクレア王国側からは入れなくなると思います。国全部を覆うとなると、街や村の数が正確に必要になりますから」
シキの存在が私の中で大きくなる前に、少し離れた方が良いのかもしれない。
考えることは色々あるけど、今は今しなきゃいけないことをしよう。
「転移で飛びましょう。遅くなるとアルヴァン様に叱られます」
「ああ」
「そういえば、クラウド様たちはいつ頃カルディアに来られるんですか?」
魔石を集めたら、婚約者様と一緒に来ると言ってたけど。
グレイ王国へ転移する直前、ふと思い出して聞いてみた。
「クラウドの方は、あと一週間もすれば来るだろう。グレンのほうはもう少しかかるみたいだな」
「そうなのですね。余裕があれば、彼らの分も狩っておいても良いですね」
シンクレア王国を救おうとは思わないけど、私とシキが一緒なら、相当数狩れると思う。
予備として狩っておいても良い気がする。
「・・・ティアの思うようにすればいい。ただ、無理をすることはない。アイツらはアイツらで、ちゃんと準備して来るはずだ」
「そうですね。まずはグレイ王国の結界のことを考えることにします」
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異常種の魔石を加工して、範囲ではなく時間を長くもたせるような結界石を作った。
おかげで何とか、本来なら一週間しかもたない結界石が、半年はもつようになった。
ただ、聖力を込めなければ、結界石はただの石ころになってしまう。
先のことを、考えるべきなのかもしれない。
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