聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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うん。返してやろう

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 シキが魔法を展開し、シキ本人と王妃様を包むように魔法が張り巡らされた。

 うん。やっぱりシキの魔法は繊細で、すごいと思う。

 私は彼の魔法を邪魔しないように、ゆっくりと細く細く聖力を王妃様に向けて流し始める。

 シキは十分は保たせてくれると言った。
 なら、それを信じて、慌てず焦らず、正確に呪詛の元を絡めとることに集中する。

 伸ばした聖力の先に、チリリと何かが触れた。

 ああ。見つけた。

 ゆっくりとそれを聖力で絡めとる。

 自分を絡めとる聖力に、ソレは抗おうとするけれど、私の聖力は簡単に解けるほどヤワではない。

 そういえば、教皇も年の功か経験値か、引き剥がしは上手かったわね。

 他の聖女とやった時は、引き剥がせなかったり、失敗もあったっけ。

 完全に呪詛を聖力で縛り込んだ時点で、五分ほど経過していた。

 普通なら、このまま聖力で握りつぶす。
そうすると呪詛は消滅するんだけど・・・

「シキ。あと五分くらい保ちますか?」

「ああ」

 王妃様は呪詛で弱っているから、聖女の癒しの力で回復させないといけない。

 呪詛にかまっている間は、癒しの魔法を使えないから、一気に締め付けてしまうかな。

 あ。そうだ。

 それなりの力のある聖女や魔法使いになら見えるのだけど、呪詛はその呪いをかけた相手と細い糸で繋がっている。

 実際、今私の聖力で包まれた呪詛から、蜘蛛の糸のような細い魔法の糸が見えている。

 この糸通せば、呪いをかけてきた相手に返せるんじゃない?

 聖力で潰してしまわなければ、呪詛は新たな宿主を探す。

 私とシキ、そして王妃様を結界で包んで、糸にだけ逃げ道を作って刺激を与えれば、呪詛をかけた人間に戻ろうとするんじゃないのかな。

 うん。
案ずるより産むが易し、だわ。

 私は呪詛の逃げ道を繋がった糸にだけ残して、締め上げをほんの少しだけ緩めた。

 呪詛と聖女の力は、相性が悪い。
聖力から逃げたい呪詛は、跳ね返るように糸から逆戻って行った。

 あれ?
思ってたよりめちゃくちゃ簡単だったような・・・

「シキ、もう大丈夫」

「終わったのか?」

「うん。なんか、呪いをかけた人間に呪い返し?ができたっぽい」

「は?」

 いや、そんなびっくりした顔をされても、私も出来るとか思ってなかったし。

 たまたまシキという優秀な魔法使いがいたから、私が呪詛の始末を出来たというか。

 え?教皇は何で呪い返しやんなかったの?
 手間はさほど変わらないのに。

 あー、あの人、余計なことはしたくないタイプだったからかも。

「それはさておき、シキがいてくれて良かったです」

 シキがいなきゃ、呪いを解くことも出来なかった。
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