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これって、呪い?
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グレイ王国の第一印象は、緑豊か、だった。
木々の新緑は碧く、花が咲き、小鳥が鳴き、湖を抜ける風は爽やかだ。
大きな建物といえば王宮だけで、それもカルディア帝国やシンクレア王国のように大きくはなく、シンクレア王国の教会よりも小さい。
王都といっても、少し大きな集落のような印象だった。
「小さな国でしょう?カルディアの皇帝陛下は、うちに来られたことは?」
「いや、グレイ王国は初めてだ。だが、自然豊かだし、国民も笑顔に溢れていて・・・良い国だと思う」
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいですわ。ティアラさんも大したおもてなしはできないかもだけど、くつろいでちょうだいね」
「はい。ありがとうございます」
グレイ王国は、カルディア帝国から北西に位置していて、遠回りをすれば山脈を越えなくていい分シンクレア王国から来るよりは経路としては楽だ。
シキと二人なら高速移動もできるけど、今回はさすがにアントワナ様と一緒だったので、大人しく馬車に揺られてグレイ王国入りをした。
カルディア帝国の馬車だったから、何とかお尻は痛くならずに済んだけど。
帰りは転移魔法で帰ろう。
馬車は、御者さんに頑張って持って帰ってもらおう。
王宮に入って、まずは国王陛下にご挨拶することになった。
「お父様。カルディア帝国皇帝陛下、そして聖女ティアラ様ですわ」
「お初にお目にかかる。シキ・カルディアだ」
「はじめまして。平民なので姓はありません。ティアラです」
「おお、これはよくお越しくださいました。グレイ王国国王のアルバトスと申します」
アントワナ様のお父様は、お優しそうなお方だった。
国王陛下に、冒険者だとか今は聖女じゃないとか説明するのもアレなので、ティアラと名乗っている。
「それで、どうしたのだ?アントワナ。何故、皇帝陛下と聖女様と共に?」
「お母様の容態を、聖女様が診てくださると。ティアラ様は歴代の聖女の中でもトップクラスのお力をお持ちです。もしかしたら、お母様のご病気も回復されるかもしれません」
「それは・・・わざわざありがとうございます。ですが、我が国の医師たちにも何故王妃が倒れたのかわからないのです。聖女様も、お分かりにならなくてもどうかお気になさらず。わざわざ来ていただいただけで十分です」
私は頷くとアントワナ様に案内されて、王妃様のお部屋に向かう。
陽の当たる明るいその部屋で眠るその人は、アントワナ様がお年を召したらこんな感じだろうなって人だった。
ただ・・・
何か昏く澱んだ何かが、王妃様に纏わりついているのを感じた。
これ、病気じゃない。呪詛?
木々の新緑は碧く、花が咲き、小鳥が鳴き、湖を抜ける風は爽やかだ。
大きな建物といえば王宮だけで、それもカルディア帝国やシンクレア王国のように大きくはなく、シンクレア王国の教会よりも小さい。
王都といっても、少し大きな集落のような印象だった。
「小さな国でしょう?カルディアの皇帝陛下は、うちに来られたことは?」
「いや、グレイ王国は初めてだ。だが、自然豊かだし、国民も笑顔に溢れていて・・・良い国だと思う」
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいですわ。ティアラさんも大したおもてなしはできないかもだけど、くつろいでちょうだいね」
「はい。ありがとうございます」
グレイ王国は、カルディア帝国から北西に位置していて、遠回りをすれば山脈を越えなくていい分シンクレア王国から来るよりは経路としては楽だ。
シキと二人なら高速移動もできるけど、今回はさすがにアントワナ様と一緒だったので、大人しく馬車に揺られてグレイ王国入りをした。
カルディア帝国の馬車だったから、何とかお尻は痛くならずに済んだけど。
帰りは転移魔法で帰ろう。
馬車は、御者さんに頑張って持って帰ってもらおう。
王宮に入って、まずは国王陛下にご挨拶することになった。
「お父様。カルディア帝国皇帝陛下、そして聖女ティアラ様ですわ」
「お初にお目にかかる。シキ・カルディアだ」
「はじめまして。平民なので姓はありません。ティアラです」
「おお、これはよくお越しくださいました。グレイ王国国王のアルバトスと申します」
アントワナ様のお父様は、お優しそうなお方だった。
国王陛下に、冒険者だとか今は聖女じゃないとか説明するのもアレなので、ティアラと名乗っている。
「それで、どうしたのだ?アントワナ。何故、皇帝陛下と聖女様と共に?」
「お母様の容態を、聖女様が診てくださると。ティアラ様は歴代の聖女の中でもトップクラスのお力をお持ちです。もしかしたら、お母様のご病気も回復されるかもしれません」
「それは・・・わざわざありがとうございます。ですが、我が国の医師たちにも何故王妃が倒れたのかわからないのです。聖女様も、お分かりにならなくてもどうかお気になさらず。わざわざ来ていただいただけで十分です」
私は頷くとアントワナ様に案内されて、王妃様のお部屋に向かう。
陽の当たる明るいその部屋で眠るその人は、アントワナ様がお年を召したらこんな感じだろうなって人だった。
ただ・・・
何か昏く澱んだ何かが、王妃様に纏わりついているのを感じた。
これ、病気じゃない。呪詛?
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