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思ったより連携できてる!

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 ゴォォォォォ!

 シキの竜巻が亀を中心に発生する直前に、私は亀を立方体の結界の中に閉じ込めた。

 つまりは、結界の中にだけ竜巻が発生していることになる。

 タイミングが合わないと、シキの魔法は私の結界に阻まれるし、結界が遅れると周囲に被害が及ぶ。

 絶妙なタイミングが求められるわけだけど、思ってたより連携が上手くいったようだ。

 だけど砂埃がおさまった後、そこには傷だらけになりながらも、まだ生きている亀がいた。

 どうやらあの胴体、相当硬いみたいだ。

「まだ、生きてるのか」

「多分、頭部は弱いと思うんです。今も頭、引っ込めてますし。ただ、胴体は相当に硬そうですね。雷撃系で痺れさせれば頭、出てくるかもしれませんね。そこにかまいたちのような斬撃を加えれば」

 前回の異常種のように、ストックの魔法を使えば倒せるだろう。

 だけど、あの類はできることなら他人の前で使いたくない。

 アレは・・・規格外過ぎる。
私の異常さをシキが感じていたとしても、まだシキの中で『常識』の範囲内にある。

 理由は簡単。シキが私に好意を持ってるから。

 人は、桁外れの、自分の常識が通じない『化け物』に好意は抱けない。

 皇帝であるシキは、もし私が『化け物』だったとしても、それに利用価値があれば利用しようとするだろう。

 でも、婚約者にとかには望まない。
それはカルディア帝国の地盤を揺るがしてしまうから。

 恋愛としての好意ではないけど、友情に毛が生えた程度の今の関係を壊したくはない。

 シンクレア王国では『聖女』という道具だった。

 同じ聖女としての力を発しても『ティア』として見てくれるこの場所は、思っていたより私にとって価値のあるもののようだ。

「分かった。だが、アレは相当魔力を使う。あと一回しか全力では出せない」

「はい。これで無理だったら、他の手を考えましょう。雷撃は私がやります。少し結界の強度を上げますね」

 私は一旦、結界を解く。

「では、タイミングは先ほどと同じで放ってください」

「分かった」

 シキの魔法のタイミングに合わせ、雷撃を放ち、即座に結界を張る。

 先ほどよりワンランク強めに張った結界の中で、雷撃が走り、そこに起きた竜巻によって雷撃は結界内を暴れ回る。

 あ。水属性持ってるなら、最初から雷撃使えば良かったかも。

 水って雷の伝導率高かったような・・・

 雷撃を纏った竜巻は結界内を暴れていたけど、しばらくするとそれもおさまってきた。

 そこには、亀の姿はなく・・・

 大きな水色の魔石のみが残っていた。
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