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「何が楽なんだ?」

 シキの声に、私は懐のクロの頭を撫でながら振り返った。

「お疲れ様、シキ」

「ああ」

「アーバンラマとの国境付近で魔獣が出てるって本当ですか?」

 私の問いかけに、シキは一瞬眉を顰めた。

「・・・誰に聞いた?」

「ギルド。というか、なんで秘密にするんです?グレン様たちの帰り道、大丈夫なんですか?」

「護衛も付いてるから大丈夫だろう。念の為に騎士団も同行させている」

「ということは、危険がある可能性があるんですね?私に言ってくれたら、護衛を・・・ああ、そのまま私がアーバンラマやラプラスに行くんじゃないかと思ったんですね」

 シキは返事をしなかったけど、苦虫を噛み潰したような顔をしてるから、多分この予想は合っているんだろう。

 妙に懐かれたものだと思う。
確かに国としては、聖女の力は欲しいだろう。

 今までシンクレア王国が独占していた聖女が、報酬はいるけれど望めば結界を張ってくれるのだ。

 もちろん次代の聖女が現れなければ、結界は意味をなさなくなる。

 でも、その結界の仕組みを解くことができれば、シキが作ったという魔道具の強化ができるかもしれない。

 シキが作ったという、結界に似た効果を出す魔道具は、今はシキの魔力で動いているらしい。
 だから量産出来ないのだとか。

 魔力でいいなら、魔獣の魔石が代用できないかな。

「今回、すぐにアーバンラマとかに行くつもりはありませんよ?お二人とも通行証を持ってきてくれると言ってましたし。単に、魔獣退治に行こうと思っただけです」

「ギルドから冒険者に依頼が出て、Aランク冒険者が向かっている」

「ということは、異常種か、相当魔獣の数が多いか、ですね」

 普通の魔獣なら、Aランクが向かうことはない。
 Aランクに依頼を出すということは、それなりの依頼料が発生するからだ。

 その上で、Aランクが向かったということは、それなりの実力がなければ勝てない相手ということ。

 うーん。やっぱり異常種かも。
異常種なら、欲しい。

「やっぱり、私も行きたいです」

「だ、駄目だ。危険だろう!」

「・・・シキって、馬車の襲撃のときは全く心配もしてなかったですよね?私が聖女だと分かったから、大事にしてるんですか?」

 それは、国のトップに立つ者として間違いではない。

 シンクレア王国のように、シキはただ働きに近い扱いをしたりしない。

 ちょっと束縛が鬱陶しいと思わないでもないけど、悪い人ではないと思う。

「違う。聖女の力は確かに欲しいが、ティアがただの冒険者でも、僕のそばにいて欲しいと思う」

 なんですと?
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