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どうすれば良い?〜シンクレア王国王太子視点〜

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 父上の怒号を受けて、母上の故郷であるグレイ王国に向かう。

 母上の協力をもらえるまで戻って来るなとか言っていたが、そもそも母上が故郷に帰っているのは、父上の浮気癖のせいだろう。

 僕を身ごもっている時に浮気をして、母上の逆鱗に触れた。

 出産後に離婚を言われたらしいが、僕の親権問題があったのと、幼い僕を母親のいない子にしたくなかった母上は、普通の母親通りに僕には愛情を注いでくれた。

 僕に弟妹がいないのは、母上が閨を拒んだから、らしい。

 そのことは、母上が僕がある程度のことが分かる年齢になった時に話してくれた。

 ああ。
そういえばその時に、婚約者は大切にするようにって言われたっけ。

 僕のお祖母様、つまり母上のお母様が病床につかれた二年前に、母上はグレイ王国に行き、それ以来帰って来ない。

 迎えに行って、頭を下げたら戻って来てくれると思うが、父上は相変わらず未亡人の貴族のご婦人たちと遊んでいる。

 帰って来ない方が気楽、とでも思っているのかもしれない。

 王妃としての公務は、ティアラがいる時は王太子の婚約者として、代理でアイツがしていた。

 ティアラがいなくなったせいで、公務が自分にかかって来たから、イライラしているんだろう。

 愛息子の僕が会いに行けば、母上はきっと泣いて喜ぶだろう。

 厳しいところもあったけど、僕にとっては優しい母上だ。

 もしかしたら帰りたいというかもしれないし、僕にグレイ王国で暮らそうと言うかもしれない。

 グレイ王国は母上の弟が継いでいて、確かその息子、僕にとっての従弟が王太子だったはずだ。

 僕の方が優秀だから、グレイ王国の王太子に、なんて言われるかも。

 父上は鬱陶しいし、ティアラが見つからなければ魔物の襲撃に怯えながら暮らさなければならないシンクレア王国より、グレイ王国の方がいいかもしれない。

 そんなことを考えながら王城へと向かった。

「は?」

 当然のように王宮へと招かれ、もしかしたら母上が駆け寄って来てくれるかもしれない、なんて考えていた僕は、門番の言葉にポカンと口を開けたまま固まった。

「ですからアントワナ様は、シンクレア王国からの使者と話す気はないので、お引き取り願うようにとおっしゃっております」

「使者って・・・僕は母上の息子だぞ?」

  この門番は取り次ぎもマトモにできないのか?

 だが、門番は申し訳なさそうに頭を下げた。

「はい。その旨お伝えしてあります。ですが、アントワナ様は、その・・・殿下のことをシンクレア王国の王太子であって、自分の息子ではない、とおっしゃられました」

 は?母上は何を言ってるんだ?

 というか、母上に協力してもらわないと国には帰れない。

 なのに母上は会ってくれない?
どうすればいいんだ!

 

 
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