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可能性はなきにしもあらず

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「本当に可愛いなぁ」

 ラプラスの王太子殿下、クラウド様の言葉に、シキは仏頂面だ。

「リミア嬢に言いつけるぞ」

「ははっ。リミアもきっとティアちゃんを見たら可愛いって連呼するさ。あ。リミアっていうのはね、僕の婚約者なんだ。ラプラスの公爵家の令嬢で幼馴染。シキにとっても幼馴染だよ」

「そうなんですね」

 正直言って、貴族にあまり良い印象のない私としては、自分の婚約者が可愛いという平民の小娘のことを、身分あるご令嬢が良い印象を持つとは思えないけど。

 あの、シンクレアの王太子に熱をあげていた聖女もそうだけど、身分のある人ってちょっと傲慢だ。

 確かに容姿も整ってるし、綺麗なドレスも似合ってるし、髪だって手入れされてて、所作も綺麗だと思う。

 でも内面の傲慢さがあるから、聖女の務めもできてなかった。

 まぁ、それはそれでいいけど。
あの人たちと私の生きる世界が違うってだけだし。

「あのご令嬢なら、間違いなく可愛いと歓喜するだろうな」

「ね?グレンもそう思うよね。グレンとこは?」

「うちのカーティは男勝りだからな、可愛いというよりはかっこいいものを好むが、ティア嬢は魔法も得意と聞いた。カーティが目を輝かしそうだ」

「あ、ティアちゃん。カーティ様というのはね、グレンの婚約者でね、僕たちの一歳年上のご令嬢だよ」

 なるほど。
クラウド様もグレン様も婚約者様がいるのね。

 まぁそれは、普通のことなんだと思う。

 貴族の人たちは、家のために婚約する義務もあるらしいし、平民みたいにはいかないだろう。

 シンクレア王国の聖女でなくなった私には、縁のない世界だと思う。

 聖女だった頃は、私を国から出さないために、王太子殿下の婚約者だなんてしたくもない役目を押し付けられたけど、幸いにも王太子殿下がお馬鹿だったおかげで、婚約破棄された。

 三歳差が恋愛対象にならないとは言わないけど、私には平民の感覚しかないから、十三歳の今でも、恋愛とかよくわからない。

 私はただ、クロと幸せに日々過ごしていければ、それだけでいい。

 いつかは誰か好きな人ができるのかもしれないけど、できれば貴族とかじゃなく平民の、色んなしがらみとかない人と恋愛して結婚出来れば良いなぁって思う。

 そう言ったら、グレン様もクラウド様も、壁際のアルヴァン様も、ものすごく微妙な表情をされた。

 シキは・・・うーん。ちょっと落ち込んでる?元気ない気がする。

「シキ。どうかした?なんか元気ない?」

「これは、なんとも・・・可能性があるんだかないんだかね」

「これからのお前次第ということだろう。しっかりしろ」

 うん?クラウド様たちがよくわからないことを言ってるけど、なんのことだろ。
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