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やってきた!
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「陛下。シンクレア王国、王太子殿下と教皇様がお見えになりました」
謁見の間に入ってくる元婚約者と教皇の様子を、私は隠し部屋から見ていた。
魔法使いであるシキが発明した、遠見の鏡(試作品)を使って。
これは、離れた位置の様子を対の鏡で見ることができるものだ。
ただし、AからBの様子は見れるが、逆は見れないらしい。
どちらからも見れるように改良しているらしいが、まだ完成していないそうだ。
幸いにも、今回私の様子をアチラが見る必要はないので、私はAの鏡を持ち、Bの鏡はシキの後ろに設置してある。
うーん。鏡に映る部分しか見えないな。
これ、球体とかなら、どんな角度からでも見れるんじゃないの?
一方通行とはいえ、声も聞こえるのだからすごい。
片道だけでも、ここまでできているのだから、相互になるように簡単にできそうだけど。
遠見の鏡について考え込んでいるうちに、王太子と教皇は挨拶し終わったようだった。
あ。聞いてなかったわ。
「我が国の聖女、ティアラ・クリムゾンを返していただきたい」
「・・・」
「貴国に魔物が現れなくなったのは、聖女であるティアラが結界を張ったからだろう?彼女はシンクレア王国の聖女であり、僕の婚約者だ。すぐにここへ連れてきてもらいたい」
「・・・」
は?何言ってんの?
アンタの婚約者は、公爵令嬢の聖女様でしょう?
大体、婚約破棄と一緒に国外追放を告げたのも、アンタよね?
会話が通じない、通じないと思ってたけど、本当にこれは通じないわ。
私からは、シキの背中しか見えない。
その表情は見えない。
見えないのに、シキの表情が分かる。
怒ってる。
元婚約者はシキは自分と同い年だし、教皇からすればシキは若輩者、とでも思ってるんでしょうね。
だから、物言いが横柄なんだと思う。
そこにいるのは、この帝国の皇帝陛下だというのに。
反乱軍を十五歳で制圧した人を、どうして自分より下だと思えるのかな。
「な、なんとか言ったらどうだ!」
カタパルト王太子が、イライラしたように一歩前に足を踏み出して・・・
アルヴァン様の剣が、その首元に突きつけられた。
「ひぃっ!」
「な、何をするのだ!その方はシンクレア王国王太子カタパルト殿下だぞ」
王太子は腰を抜かしてその場に尻餅をつき、教皇がアルヴァン様に食ってかかる。
「それがどうした?カルディア帝国皇帝の前で許可なく発言した上に、玉座に近づこうとした。それがどういうことかすらわからないのか?」
シキの声が、氷点下まで冷たく聞こえる。
馬鹿にも程がある。
王太子だろうが、国王だろうが、帝国のその玉座に座る皇帝陛下に勝手に近づこうとすれば、危害を加えようとしていると思われでも仕方ないだろうに。
私は呆れてため息を吐いた。
あの国を出て正解だったわ。
謁見の間に入ってくる元婚約者と教皇の様子を、私は隠し部屋から見ていた。
魔法使いであるシキが発明した、遠見の鏡(試作品)を使って。
これは、離れた位置の様子を対の鏡で見ることができるものだ。
ただし、AからBの様子は見れるが、逆は見れないらしい。
どちらからも見れるように改良しているらしいが、まだ完成していないそうだ。
幸いにも、今回私の様子をアチラが見る必要はないので、私はAの鏡を持ち、Bの鏡はシキの後ろに設置してある。
うーん。鏡に映る部分しか見えないな。
これ、球体とかなら、どんな角度からでも見れるんじゃないの?
一方通行とはいえ、声も聞こえるのだからすごい。
片道だけでも、ここまでできているのだから、相互になるように簡単にできそうだけど。
遠見の鏡について考え込んでいるうちに、王太子と教皇は挨拶し終わったようだった。
あ。聞いてなかったわ。
「我が国の聖女、ティアラ・クリムゾンを返していただきたい」
「・・・」
「貴国に魔物が現れなくなったのは、聖女であるティアラが結界を張ったからだろう?彼女はシンクレア王国の聖女であり、僕の婚約者だ。すぐにここへ連れてきてもらいたい」
「・・・」
は?何言ってんの?
アンタの婚約者は、公爵令嬢の聖女様でしょう?
大体、婚約破棄と一緒に国外追放を告げたのも、アンタよね?
会話が通じない、通じないと思ってたけど、本当にこれは通じないわ。
私からは、シキの背中しか見えない。
その表情は見えない。
見えないのに、シキの表情が分かる。
怒ってる。
元婚約者はシキは自分と同い年だし、教皇からすればシキは若輩者、とでも思ってるんでしょうね。
だから、物言いが横柄なんだと思う。
そこにいるのは、この帝国の皇帝陛下だというのに。
反乱軍を十五歳で制圧した人を、どうして自分より下だと思えるのかな。
「な、なんとか言ったらどうだ!」
カタパルト王太子が、イライラしたように一歩前に足を踏み出して・・・
アルヴァン様の剣が、その首元に突きつけられた。
「ひぃっ!」
「な、何をするのだ!その方はシンクレア王国王太子カタパルト殿下だぞ」
王太子は腰を抜かしてその場に尻餅をつき、教皇がアルヴァン様に食ってかかる。
「それがどうした?カルディア帝国皇帝の前で許可なく発言した上に、玉座に近づこうとした。それがどういうことかすらわからないのか?」
シキの声が、氷点下まで冷たく聞こえる。
馬鹿にも程がある。
王太子だろうが、国王だろうが、帝国のその玉座に座る皇帝陛下に勝手に近づこうとすれば、危害を加えようとしていると思われでも仕方ないだろうに。
私は呆れてため息を吐いた。
あの国を出て正解だったわ。
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