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悪い知らせと陛下の判断

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 アルヴァン様のお子様たちと会ってから一ヶ月後のある日、私によくない知らせが届いた。

「シンクレア王国の、使者ですか」

 シキからお茶の時間に聞かされたのは、シンクレア王国から使者が来るという話だった。

 私がカルディア帝国に結界石を置き、魔物の被害が減った時点で、いずれは来るだろうなとは思っていた。

 バレると分かっていて、シキの願いに応えた。

 いざとなれば、カルディア帝国から出ていけばいい。

 そう思っていたから。

 クロがナイトの元に残りたいと言われたら、とそれだけが不安だった。

「私がこの国を出て行くとしたら、クロはどうする?お父さんのところに残りたい?」

 そう尋ねた私に、クロはまるで「なにを言ってるんだ?」と言うように、にゃーと鳴いて私の懐に飛び込んできた。

 一緒に行くに決まってるだろ?と言ってくれてる気がした。

 それに、もしそういうつもりじゃなかったとしても、二度と会えないわけじゃない。

 転移魔法の使える私は、いつでも帝都に戻って来ることが出来る。

 だから、シンクレア王国の使者が来るということにも、とうとう来たか、と思っただけだった。

「僕が結界石を頼んだから、だな」

「それはそうなんですけど、理解った上で受けたのは私です。使者は誰が来るんですか?教皇でしょうか?」

 十六歳とはいえ、シキは大国カルディア帝国の皇帝陛下。

 私を連れ戻す目的とはいえ、皇帝陛下に謁見するのだから、それなりの身分の人間が来るだろう。

「・・・それが、教皇と王太子が来るらしい」

「・・・へぇ」

 教皇は来るだろうなとは思っていた。

 残った聖女たちでは、結界石の維持すら厳しいだろう。

 そろそろ、王都にも魔物が現れている頃かもしれない。

 でも、婚約者を得た王太子が来るとは思わなかった。

 聖女としてはイマイチでも、マリアベルは公爵令嬢。
 王太子の婚約者として、身分的にも問題ない存在だ。

 それなのに何故、王太子が来るのか。

 国王陛下の代わり、とか?

 しかし一応、一国の王太子と教皇がやって来るわけで。

 平民の私を連れ戻そうとしても、シキがそれを咎める権利はない。

 常識のない彼らのことだから、シキに私の引き渡しを要求するかもしれない。

 これは、やって来る前に出ていくべきだろう。

 いなければ「出て行った」と言えば済む話だ。

「面倒ごとになる前に、とりあえず出て行こうと思います」

「ッ!駄目だ」

「落ち着いたら戻って来ますよ。結界石の管理もありますし」

 とりあえず、一ヶ月くらい姿をくらませていればいいだろう。




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