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護衛騎士の感謝
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「わ、わかったから!そのフォークのは自分で食べろ。半分食べたのを寄越せば自分で食べるから!」
陛下はそう言うと、紅茶を一気に飲み干し・・・ゲホゲホと咳き込んでいる。
そんな一気に飲むから。
少し離れた位置で立っているアルヴァン様が、慌てて陛下に近寄ろうとするけど、陛下は手で制していた。
咳き込みすぎたのか、耳まで真っ赤になっている。
「大丈夫ですか?」
「・・・いいから、気にせず食べろ」
ふいっと横をむかれ、なんだか釈然としないけど私はフォークのケーキを口に放り込んだ。
それから、食べたい順にケーキを半分にしては陛下のお皿に回し、腹六分目を超えたあたりで終了とした。
あっちのも食べたかったけど・・・
「欲しいなら食べたらどうだ?僕はもう要らんが、ひとつくらい一人で食べれるだろう?」
よほど、私は物欲しげな目をしていたんだと思う。
陛下にそう言われて、でも私は首を横に振った。
「いえ。もうたくさんいただいたので。残り、侍女の方々に差し上げてくださいね」
皇帝陛下付きの、お世話をしている侍女の方は結構な人数がいる。
残ったケーキではひとり一個は無理かもしれないけど、半分ずつくらいなら全員にあたると思う。
半分ずつなんて、申し訳ないかな。
一個で我慢してれば良かったかな。
「・・・・・・今度はもっと多めに買って来てやるから、そんな顔するな」
皇帝陛下には、私の考えてることなんかお見通しだったみたいで、頭をポンポンと叩かれた。
お茶会が終了して、アルヴァン様が私を客室まで送ってくれながら笑っていた。
ちなみに陛下は、別の護衛の方と執務室まで先に戻られた。
お茶の後はいつも、アルヴァン様が私を送ってくれる。
別に客室にくらい一人で戻れるんだけどな。
陛下の専属護衛のアルヴァン様に送ってもらうのは申し訳なくて、一度お断りしたんだけど、陛下にごし押しされた。
「何か楽しかったですか?」
ニコニコしているアルヴァン様に尋ねると、それはそれは嬉しそうに話してくれた。
「陛下があんなに食されるのを、初めて見ました。元々、食の細い方でしたが、ご両親を亡くされてからは特に何を食べても美味しくないようで。その陛下が、あれほど食べてくださるなんて。本当にティア様には感謝いたします」
「・・・そう、なんですか。役に立てたなら、良かったです」
反乱軍にご両親、前国王陛下と王妃殿下を殺された皇帝陛下。
それから、反乱を鎮めて国を建て直すのは大変だっただろう。
食事に味がない、か。
それでもさっきの陛下は、仕方なしにしても結構食べてくれた。
夜、寝れてるのかな。
ふとそう思った。
陛下はそう言うと、紅茶を一気に飲み干し・・・ゲホゲホと咳き込んでいる。
そんな一気に飲むから。
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「・・・いいから、気にせず食べろ」
ふいっと横をむかれ、なんだか釈然としないけど私はフォークのケーキを口に放り込んだ。
それから、食べたい順にケーキを半分にしては陛下のお皿に回し、腹六分目を超えたあたりで終了とした。
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一個で我慢してれば良かったかな。
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ふとそう思った。
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