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あれ?陛下に懐かれた?

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 結界石は正常に作動しているようで、各地からの報告にも魔物の襲撃というものは減ったようだ。

 もちろんアルプロの森のように、魔物の生息地はあるので、冒険者が怪我をしたり、街から街へ移動中の人が魔物に出会したり、というのはあるらしい。

 ただそのあたりも一応、ポーション作りのアルバイトを始めたので、酷いことにはなってないようだ。

 シンクレア王国以外に聖女はいない、らしいので、どの国も薬草などからポーションを作成している。

 ただ多く出回っている薬草でのポーションは、聖女の癒しの力の下位ランク同等程度だから、その点でも私が作るポーションなら高ランクのものができる。

 まぁ、それに応じて値段も上がるけど、一応騎士団に卸す分は、適正価格のアルバイト代でもらっている。

 相当お得らしく、アルヴァン様からお礼を言われた。

 私が聖女だということは伏せられていて、なので高ランクのポーションができたことに関しては、調合スキルの高い人間が見つかったということにしているらしい。

 調合スキルというのは、薬草でポーションや毒消薬などを作る能力のことだ。

 よくゲームのステータス画面で見る、剣スキルや盾スキルと似たようなものだ。

 生産系スキルもだけど、スキルというものは得手不得手があって、剣のスキル持ちは剣の腕が、槍のスキル持ちは槍の腕が上達する。

 同じように、調合スキルのレベルの高い人は、同じ薬草を使っても、低い人より効果の高いポーションを作れる。

 聖女の癒しの力はスキルとはまた違うベクトルのものだから比較にはならないけど、調合スキル持ちはこの国にもいるから、そういうことにしておくのが無難だと思う。

「で、陛下。何をされてるんですか?」

 私は本日の納品分のポーションを作り終え、ついでに毒消薬と麻痺薬も作り、片付けをしながら声をかけた。

 さっきから・・・三十分ほど前から扉に隠れるように、皇帝陛下が部屋の中を覗いていたから。

 何か用なら声をかけてくるだろうと、放置していたら三十分たっていた。

 そういえば、昨日も一昨日も似たような会話をしたなぁ、と思う。

 代金は貰うけどという前置きの後、私がポーション作りを引き受けてから、妙に陛下が私にかまってくる。

 不審がっていたら、アルヴァン様は「感謝しているんですよ。照れて上手く言えないみたいですが」と言っていた。

 実際、本人から数日前にお礼を言われた。

 聖女のいない国は、どうしても魔物の被害が出るのを防げない。

 そのために冒険者や騎士団に怪我人が出ることもあって、国のトップとしては何とかしたかったらしい。

 そういうところは、どっかの国と大違いだなって、素直に褒めたい気持ちになった。
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