聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜ＬＶ∞の聖女は冒険者になるらしい〜

ある意味全部話すしかなかった

「・・・というわけでして」

「『・・・』」

　クロのことがあるから、仕方なくシンクレア王国であったことを全て話した。

　私が元孤児で、伯爵家に引き取られ、すぐに売られるように教会に引き取られたこと。

　聖女として、シンクレア王国に結界を張らされていたこと。

　教会の裏庭でクロを見つけたこと。

　瀕死のクロを救いたくて、治癒魔法をかけたこと。

　聖女の務めを終えて部屋に戻ったら、クロが傷だらけで倒れていたこと。

　再び治癒魔法をかけたけど、血が失われていたから、しばらく目覚めなかったこと。

　翌日からひとりで置いておくことが不安で、隠蔽魔法をかけておいたこと。

　婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を告げられ、これ幸いと国から出て来たこと。

　周辺国で唯一、シンクレア王国と国交していないカルディア帝国に来たこと。

　生きていくためにギルドで冒険者登録をしたこと。

　うん。こうして説明してみると、なかなかに波瀾万丈だったわ。

　現に目の前では、皇帝陛下も、ケット・シーのナイトも固まってるもの。

「クロに影響が出たとしたら、治癒魔法だと思うんですけど」

「・・・はぁ。ただものではないと思っていたが、まさかシンクレア王国の聖女とはな」

　そういえば、防御魔法は気づかれてたけど、治癒魔法とかは見せていなかったっけ。

「ははは」

「よくシンクレア王国はお前を手放したな」

「あー。彼らは私が治癒と結界の魔法を使えること以外は知りませんから」

　その治癒と結界の聖女の力も、控えめにしておいたし。

　それでも国王陛下がいたら、婚約破棄は叶わなかったと思う。

　だって残ってる聖女では、とても結界の維持はできないもの。

　逃げたかな、平民の聖女たち。

「どう思う？ナイト」

『おそらくはその治癒魔法が原因だと思うが、我では断言は出来ん』

「別の何か、とは何なのか分かるか？」

『それも我には分からん。ただケット・シーでなくなったということしかな。意思の疎通が上手くいかん。こちらの言っていることは伝わっているらしいが、クロの意思がこちらでは読み取れん』

　うーん。
それって、子供だからというわけではないのかな。

「子供だから、ではないの？」

『それもあるかもしれんが、本来は子供でもケット・シー同士なら意思疎通は出来る。人相手となると言葉にする必要があるから、子供だからとも言えるがな』

「そう、なんだ」

　そっか。
確かに、人間でも幼い子供の言ってること、親だったら分かるっていうのあると思うし、特にケット・シーみたいに意思疎通できるのなら、そうなのかもしれない。

　ええ？
これ、誰に聞けば分かるの？