聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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捕まった相手は

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「にゃー」

 フードの男性に手を掴まれ、この際転移魔法で逃げようと決心した時、ひょこっとクロが顔を覗かせた。

 クロが私の言うことを聞かないなんて珍しい。

 思わず転移し損ねていたら、フードの男性の胸元から黒い塊が・・・

 え?クロ?

「にゃん」

「みゃー」

 え?ええ?

「やはりナイトの子を連れていたか」

 ナイト?子供?

「みゃー」

「にゃー」

 クロが嬉しそうに黒猫のところへと飛びついていく。

「く、クロ?」

「ナイトの子はクロと言う名か。君の連れているクロとやらは、このナイトの子だ」

 確かにナイトと呼ばれた猫は黒猫で、クロも嬉しそうに頭を擦り付けている。

 でも、私がクロと出会ったのはシンクレア王国だ。

 こんな離れたカルディア帝国に親がいるなんてこと、あり得るの?

「その辺のことも説明してやる。帝都に来い。別に取って食ったりしないし、話の後、行きたいところがあるなら止めはしない」

「・・・分かりました」

 本当にクロがそのナイトとやらの子供なのなら、引き離すのはかわいそうかもしれない。

 でも、私にとってもクロは唯一の家族だったのに。

 離れたくはない。
でも、やっと会えたのなら引き離したくはない。

 だから、私はフードの男性に付いて帝都に向かうことにした。

 止めはしないという話を全面的に信用するわけじゃないけど、転移で逃げてもいい。

 その時は・・・クロと離れ離れになるかもしれないけど。

「ほら、お前も一旦飼い主の元に戻れ。後でゆっくりすれば良いだろう」

 フードの男性はヒョイとクロを持ち上げると、私の肩へと乗せる。

 クロは別に不満そうにも寂しそうにもせずに、モソモソと私の懐へと戻った。

 ナイトと呼ばれた黒猫は、その様子をジッと見ていたけど、クロが懐に入ると自分もフードの男性の胸元に戻って行く。

「名前・・・聞いてもいいか?」

「人に聞くなら自分から名乗るべきですけど、まぁいいです。ティアと言います。平民ですから姓はありません」

 嘘ではない。
ギルド登録もティアでしているし、伯爵家の養女にはなったけど、私がクリムゾン伯爵家で過ごした日などないから。

「そうか。僕の名はシキだ。歳は十六。あっちは僕のお目付役のアルヴァンだ。歳は確か二十八歳だったかな」

「私は十三歳です」

 シキという名が偽名だとは思わない。

 シンクレア王国で、一応は王太子の婚約者をしていた。

 婚約者らしいことをしたこともされたこともないけど、教育の一環で他国のことを学んだことがある。

 カルディア帝国。
その頂点、皇帝の名がシキ・カルディア。

 深紅の瞳をした、若き支配者だった。

**お詫び**

 呼び名が正しくないとの指摘により、皇国→帝国。天皇→皇帝と変更しました。
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