聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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人の親切には応えたい

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 冒険者登録を終えて、その日はボルダーにて宿を取った。

 宿屋に着く前に寄った武器屋でショートソードと、防具屋で簡易防具を購入した。

 私が持っているお金では、宿屋代と食事代を除くと、その程度の物しか買えなかったのだ。

 これは早々に、依頼を受ける必要がある。

 まぁ、私は魔法が使えるし、治癒魔法も使えるから、防具も武器もこの程度でも問題ないといえば問題ないのだけど、一応周囲の目を考えると、そこそこの物を身につけておく必要がある。

 食事をいただき、早めに部屋に上がった。

 クロ用だと言って、女将さんは鶏肉を味付けなしで蒸してくれた。

「クロ」

 部屋に入って声をかけると、モゾモゾと懐から顔を覗かせる。

 食事の途中で、クロが目覚めたのに気付き、飲み込むように食事をかき込んだのだ。

「にゃ」

「良かった・・・本当に良かった、クロ」

「にゃ」

 鶏肉をほぐして器に入れると、クロはゆっくりだが食べ始めた。

 良かった。
食事を摂らないと体力も戻らない。

 レバーや砂ずりとか摂らせた方が良いかな。
 次の宿屋で、すりおろしたそれを頼んでみようかな。

 今日は次の街へと移動する予定だけど、朝イチにギルドに寄ってみなくては。

 たいした依頼がなければ移動。
依頼があればそれを受けて、少し資金を貯める。

「クロ。私はギルドに行くけど、部屋で眠る?ここの女将さんは親切な人だから、眠ってても大丈夫だと思うよ」

 クロが眠っているなら、もう一泊頼んでも良い。

「にゃ」

 食事を終えて顔を洗っていたクロは、私が支度をして立ち上がると、胸元へと飛び上がって来た。

 どうやら一緒に来るらしい。
私も女将さんは信用できるとは思うけど、クロをひとり置いていくよりは一緒の方が安心する。

「じゃあ、一応引き払おうか。元々たいした荷物はないから」

「にゃん」

 簡単にシーツを整えて、部屋を出た。

「おや、お出かけかい?」

「ギルドに行って来ます。依頼がないようなら他の街に行くつもりです。もし、依頼があればもう一泊できそうですか?」

「猫ちゃんは元気になったのかい?部屋は大丈夫だよ。うちみたいな小さな宿屋、そんな繁盛して部屋が埋まることはないからね。次の街に行くのなら、気をつけて行くんだよ」

「はい、ありがとうございます。あ、あの、これ、私が作ったお守りなんですけど、よかったらもらって下さい」

 小さな小袋を女将さんに差し出す。

 シンクレア王国で、聖女たちが聖力をこめていた結界石を入れてある。

 もっとも聖力を込めたのは私だけど。

 長く保つように込めたから、範囲は狭いけど数年は持っている人の身を守れる。

 クロに親切にしてくれた女将さんへの、わずかばかりのお礼。

「何だか悪いねぇ。あ。ちょっとお待ち」

 そう言うと、女将さんは奥に引っ込み、すぐに出て来た。

「これ、猫ちゃんに食べさせてやりな。缶詰だけど味付けがされてないから、猫ちゃんでも大丈夫だろ?お前さんが食べるなら、この塩と香辛料を足すと良いよ」

「ありがとうございます」

「にゃ」

「ははっ。気をつけてね」

 やっぱりお守りあげて良かった。



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