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ギルド
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シンクレア王国から南に向かうと、両国を隔てる山脈がある。
険しいそれは、とても馬車が通れる道ではなく、騎馬か徒歩でなければ越えられないと言われていた。
その山の麓に国境があり、山脈から向こうがカルディア帝国となっていた。
一応、国境ではあるが、険しいばかりで馬車も通らないために盗賊も旨みがないのか現われることはほとんどないらしい。
魔物に関しては国境など関係ないが、カルディア帝国側は、山脈を越えた先にある最初の街にギルドがあるため、冒険者たちが討伐しているそうだ。
そしてシンクレア王国側には、聖女がいた。
それぞれの小さな町や村などは、聖女が数人がかりで込めた結界石で結界を張り、王都は私が結界を張っていた。
それでも町や村に魔物が現れることもあったそうだが、一応はそれぞれの領地を守る領主や騎士がいるため、大きな被害はでていなかった。
そして私は、最初の目的地であるカルディア帝国ボルダーに着いていた。
日にちにして、シンクレア王国を出てから二日たっていた。
魔力は減ったが、それは休めば回復する。
それよりも、まだ眠ったままのクロをベッドで眠らせてやりたい。
「宿屋と・・・まずはギルドかな」
ボルダーは、シンクレア王国側、つまりは辺境にある割に活気のある街だ。
賑やかな街の様子を見ながら、ギルドと思しき建物へと向かう。
扉を開けると、もう午後だったせいかギルド内には冒険者の姿は少なかった。
「こんにちは。どういうご用件でしょうか?」
窓口に向かうと受付のお姉さんが声をかけて来た。
「冒険者登録をお願いします」
まず冒険者登録をすると、Fランクから始まる。
そこから依頼を受けると、ランクが上がって行き、Bランクに上がる時に試験を受けることになる。
依頼は高いランクのものを受けることも出来るが、失敗すればペナルティとして違約金を払う義務が発生する。
この冒険者登録をすることで、冒険者カードが発行され、身分証となる。
カルディア帝国の帝都は身分証がないと入れないので、今の私は冒険者登録をすることは必須である。
「はい。じゃあ、こちらに記入をお願い出来ますか?」
「はい」
冒険者登録に本名である必要はない。
だから私は名前欄にティアと書いた。
というか、ティアラだと縮めようがない。
私はクリムゾン伯爵家の養女にはなっているが、あの家は王太子の義親と聖女の親になりたかっただけだから、国外追放になったと知れば、すぐにでも勘当して離籍手続きをするだろう。
「ティアさんですね。ではこちらがギルドカードとなります。身分証になり、これが依頼達成時の報酬を受けるのに必要になりますから、なくさないようにしてくださいね」
険しいそれは、とても馬車が通れる道ではなく、騎馬か徒歩でなければ越えられないと言われていた。
その山の麓に国境があり、山脈から向こうがカルディア帝国となっていた。
一応、国境ではあるが、険しいばかりで馬車も通らないために盗賊も旨みがないのか現われることはほとんどないらしい。
魔物に関しては国境など関係ないが、カルディア帝国側は、山脈を越えた先にある最初の街にギルドがあるため、冒険者たちが討伐しているそうだ。
そしてシンクレア王国側には、聖女がいた。
それぞれの小さな町や村などは、聖女が数人がかりで込めた結界石で結界を張り、王都は私が結界を張っていた。
それでも町や村に魔物が現れることもあったそうだが、一応はそれぞれの領地を守る領主や騎士がいるため、大きな被害はでていなかった。
そして私は、最初の目的地であるカルディア帝国ボルダーに着いていた。
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それよりも、まだ眠ったままのクロをベッドで眠らせてやりたい。
「宿屋と・・・まずはギルドかな」
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「こんにちは。どういうご用件でしょうか?」
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「冒険者登録をお願いします」
まず冒険者登録をすると、Fランクから始まる。
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カルディア帝国の帝都は身分証がないと入れないので、今の私は冒険者登録をすることは必須である。
「はい。じゃあ、こちらに記入をお願い出来ますか?」
「はい」
冒険者登録に本名である必要はない。
だから私は名前欄にティアと書いた。
というか、ティアラだと縮めようがない。
私はクリムゾン伯爵家の養女にはなっているが、あの家は王太子の義親と聖女の親になりたかっただけだから、国外追放になったと知れば、すぐにでも勘当して離籍手続きをするだろう。
「ティアさんですね。ではこちらがギルドカードとなります。身分証になり、これが依頼達成時の報酬を受けるのに必要になりますから、なくさないようにしてくださいね」
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