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やっと上手くいく〜シンクレア王国王太子視点〜
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僕はシンクレア王国の王太子として生まれた。
王太子といえば高貴な存在だ。
国王である父上と、王妃である母上に次いで敬われる存在。
そんな僕の婚約者が、孤児だなんて納得がいかなかった。
体裁を保つために、一応伯爵家の養女という形は取ったが、何処の馬の骨かも分からないというのに、何故父上はあんなのを僕の婚約者にしたのか。
癒しの魔法が使え、結界が張れる。
だがそんなのは聖女なら出来て当たり前だろう?
教会で生活はしているが、聖女には国から聖女のために給金が出ているのだから。
これで何も出来ていなければ、給金泥棒だろう。
僕の婚約者だという聖女は、真っ黒な髪に真っ黒な瞳をしていた。
この国には、黒髪や黒目の人間などいない。
あの不吉極まりない女が聖女?
魔女の間違いではないのか?
あんな不吉な魔女が自分の婚約者だということに、不満しかない。
だから、父上と母上が隣国に行っている間に婚約破棄を突きつけた。
僕の隣に立つに相応しいのは、マリアベル・ガーディナーのように身分も容姿も優れた令嬢だ。
あの魔女も容姿はまぁ、綺麗な顔立ちをしていたが、アイツには僕を敬うという気持ちがない。
マリアベルと共にいることに嫌味を言い、まるで僕と婚約したくなかったみたいな暴言を吐いた。
だから国外追放だと言ったのだ。
そう言えばきっと泣いて縋ってくると思ったのに。
あの魔女は待ってましたと言わんばかりに、ニコニコと笑みを浮かべて出て行ったのだ。
パーティー会場で、呆然としている僕に、周囲にいた令息がおそるおそる僕に声をかけて来た。
「殿下。不味くないですか?陛下がいない時に国外追放は。せめて不敬で教会に拘束しておくとかの方が」
「・・・ッ!分かっている!衛兵!ティアラを拘束しろ!王宮の地下牢へ入れる!」
「「はっ」」
衛兵が会場を出て行ったのは、ティアラが出て行ってから五分とたたずだ。
だから、すぐに拘束されるものだと思っていた。
アイツを婚約者に決めたのは父上だし、聖女だと認めたのは教皇だ。
どう見ても聖女というより魔女だと思うが、さすがに国外追放は不味かった。
他にも聖女はいるから、結界も治癒も問題ないはずだが。
「カタパルト様。国外追放ではないのですか?」
「一応アレも聖女だと教会が認めたのだ。勝手に国外に追放したとバレたらマズい。むしろ、聖女としてもっと働かせば良いんじゃないか?」
「それでは、カタパルト様の婚約者の座と、筆頭聖女の座はあの子のものではないですか」
「婚約者は、父上と話してマリアベルに変更してもらおう。マリアベルは王太子妃として僕の隣に立てばいい。聖女の務めなどあの魔女にさせておけばいいだろう?」
「・・・わかりましたわ」
マリアベルも納得してくれたことで、僕はホッとしていた。
まさか、どこにもティアラの姿がないとは思わずに。
王太子といえば高貴な存在だ。
国王である父上と、王妃である母上に次いで敬われる存在。
そんな僕の婚約者が、孤児だなんて納得がいかなかった。
体裁を保つために、一応伯爵家の養女という形は取ったが、何処の馬の骨かも分からないというのに、何故父上はあんなのを僕の婚約者にしたのか。
癒しの魔法が使え、結界が張れる。
だがそんなのは聖女なら出来て当たり前だろう?
教会で生活はしているが、聖女には国から聖女のために給金が出ているのだから。
これで何も出来ていなければ、給金泥棒だろう。
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だから、父上と母上が隣国に行っている間に婚約破棄を突きつけた。
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だから国外追放だと言ったのだ。
そう言えばきっと泣いて縋ってくると思ったのに。
あの魔女は待ってましたと言わんばかりに、ニコニコと笑みを浮かべて出て行ったのだ。
パーティー会場で、呆然としている僕に、周囲にいた令息がおそるおそる僕に声をかけて来た。
「殿下。不味くないですか?陛下がいない時に国外追放は。せめて不敬で教会に拘束しておくとかの方が」
「・・・ッ!分かっている!衛兵!ティアラを拘束しろ!王宮の地下牢へ入れる!」
「「はっ」」
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だから、すぐに拘束されるものだと思っていた。
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「カタパルト様。国外追放ではないのですか?」
「一応アレも聖女だと教会が認めたのだ。勝手に国外に追放したとバレたらマズい。むしろ、聖女としてもっと働かせば良いんじゃないか?」
「それでは、カタパルト様の婚約者の座と、筆頭聖女の座はあの子のものではないですか」
「婚約者は、父上と話してマリアベルに変更してもらおう。マリアベルは王太子妃として僕の隣に立てばいい。聖女の務めなどあの魔女にさせておけばいいだろう?」
「・・・わかりましたわ」
マリアベルも納得してくれたことで、僕はホッとしていた。
まさか、どこにもティアラの姿がないとは思わずに。
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